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訪問看護経営・マネジメントの負のサイクル|脱却のコツも解説!【訪問看護マネジメントナレッジ02】

訪問看護経営・マネジメントの負のサイクル

訪問看護は年間約2,000箇所とたくさんの事業所が新設されていますが、一方で休止・廃止率が5.5%と高く潰れていく企業もたくさんあります。また、潰れないまでも事業が安定せず絶えず火中にいるという事業所も少なくないと思います。

そこで本記事では、訪問看護の経営・マネジメントにおける負のサイクルを解説した上で、業界の課題や脱却に向けたコツをご紹介します。

訪問看護の経営・マネジメントにおける負のサイクルとは!?

訪問看護の経営・マネジメントにおける負のサイクルは、マネジメント力不足をきっかけに陥り始めます。一度負のサイクルに入ると、次第にマネジメント難易度が上がっていくため元々のマネジメント力不足に拍車がかかり、組織崩壊や最悪の事態では事業所の閉鎖・倒産に至ることもあります。そのため、対応が遅れると抜け出したくても抜け出せなくなり、負のサイクルが悪化したところから脱却するには組織や経営面で非常に大きな痛みが伴います。また、絶えず起き続ける課題に、経営者や管理者自身がバーンアウトに陥ったり、心が折れてしまうというケースも少なくありません。具体的には、以下の図のようなサイクルが生じます。

負のサイクルが起きる背景

負のサイクルが起きる原因は経営者や事業のマネジメントを行う方が医療職であり、経営・マネジメントの学習・実践経験が乏しいことが挙げられます。医療職は経営やマネジメントを学び・実践する機会が非常に少なく、簡単なリーダー研修やマネジメント研修しか受けたことがない状態で事業を始めざるを得ないため、この負のサイクルに陥りやすい構造があります。

また、医療業界で経営やマネジメント力の高い人財は非常に稀有な存在のため、そもそも理想的な経営・マネジメントができる人財としてのロールモデルのイメージが湧かないという事も大きな原因です。

事業所の組織崩壊を起こす負のサイクル

このような状態で、いざ訪問看護事業を起業したり管理者になったりすると、天性のセンスで上手く事業や人財を引っ張っていければよいですが、大抵の方は感覚的なマネジメントを行い、上手くいきません。もちろん、センスがある方でも最初からうまく行くことはないと思います。本来、多かれ少なかれ失敗を通して経営者や管理者として成長していくものです。しかし、訪問看護は労働集約型の事業で「スタッフが命」と言っても過言ではないくらい人が大事なサービスであり、ともすると同じくらい人に依存するサービスでもあるので、何度か失敗から成長する前にどんどん負のサイクルに入ってしまう難しさがあります。

その中で、陥りがちなパターンに「事業を成長させることより、組織を安定させることを重視する」というものがあります。マネジメントとして未熟なうちは、「スタッフには負荷をかけてはいけない」などメンバーを気遣うあまり、事業を成長させることよりスタッフの不満を出さないことを重視することが多く見受けられます。しかし、これこそが負のサイクルの入り口になってしまいます。

一見、従業員の不満がでないように気を使ってくれるいい上司のように思えますが、どうして負のサイクルに陥るのでしょうか。
それは、意識が高く優秀な人財が辞めていくリスクが高まるためです。例えば、訪問看護の現場で活躍したいと強い想いを持って入職したメンバーがいざ入ってみたら組織課題ばかりで現場に目を向けられない事業所だった。全体最適を考えて動いていても身勝手な言動を行う人に管理者がはっきりフィードバックしないので頑張った人が損をする組織であった。このような状況が続くと、やる気のあり、優秀で、チームのために動ける人から順番に離脱が起きていきます。

優秀な人材が抜けた後は想像ができるかと思いますが、人手不足に陥り不平不満が高まる、背に腹は代えられない状況になり水準を下げて頭数合わせの採用を行う、結果組織にマッチしない人材の割合が高まることでよりマネジメントの難易度が上がる、というサイクルに陥ります。

経営者や管理者自身ももちろん望んでいたことではなく、組織の問題ばかり起きる状況に心が折れてしまう方もいらっしゃるかと思います。

業界の人財を蝕む負のサイクル

一方、やる気があり優秀であった人財はその後どうなるかというと、マッチする職場が見つかっていればいいのですが、業界全体としてマネジメントの課題が大きいため転職先でも同じような状況に陥っていることも少なくないと思います。その結果、何度かそのような体験を繰り返すうちに頑張ることを辞めてしまう方も多く、人が育たない(育たないどころかは楽基準が環境ありきになってしまう方も)ことで業界としても非常に大きな痛手になっている現状があると思います。私たち株式会社UPDATEが創業した理由も、このようなポテンシャルのある人財をしっかりと育て活かせる環境を創りたいと思ったためで、そのために経営・マネジメント人財の育成事業を行っています。

負のサイクル脱却のポイント

訪問看護の経営・マネジメントにおける負のサイクルは、非常に根深く簡単なテクニックで脱却できるものではないですが、ここでは特に重要な経営者やマネジメントのポイントだけご紹介いたします。

「事業が主、組織が従」という考えを持ち、言動で示す。

組織には色んな考え方や価値観を持つ方がいてよいと思いますが、「訪問看護事業で世の中に価値を発揮する」という大前提があり、そのために人が集まって組織を形成しているということは共通認識として持っておくことが大切です。組織を安定させることが主になってしまうと、本来事業に強い想いを持ってくれている方ほど離脱のリスクが高まります。状況によって成長を止める時などはあると思いますが、優先度の主従は貫くことが大切です。また、よくある失敗としてミッションや理念は語るものの、具体性がなかったり日々の言動と一貫性がない場合、逆にミッションや理念が薄っぺらくなるため具体的な行動とセットで示すことが大切です。

組織(チーム)としての意思決定基準に一貫性を持たせ、組織文化を醸成する

1つ目にも関連しますが、組織の目指すもののために意志決定の基準を持ち、一貫性のある判断を行いましょう。何が良くて、何が悪いのか。そこをしっかりと示すことで、組織の文化やあり方も醸成されてきます。もちろん、意思決定は常に変わるべきで、時に間違っていることもあるので軌道修正が大事ですが、判断の軸自体がブレブレにならないよう意識をすることが重要です。

組織(チーム)のルールや決まりを明確にして徹底する。

事業で成果を出していくためには組織のルールが重要になります。大きなものから小さなものまで多々あると思いますが、ルールはしっかりと運営しきることが大事です。このルールが運用しきれない場合、ある意味ルールを守っている人が損をする、「なんでもOK」な組織になってしまいます。特に、組織メンバーとしてのスタンスなど重要なものは徹底を行い、上手く運用できないものは運用の仕方をしっかりと見直しましょう。

事業や組織の在り方に合わない言動等は、明確に指摘し改善を促す。

訪問看護の経営やマネジメントを行っていると、残念ながら時に組織にとって適切ではない言動をされる方もいます。その際、「指摘して気分を損ねたら嫌だな」「怒らせて余計に仕事をしなくなったらどうしよう」「いいところもあるから・・・」とフィードバックをすることを躊躇うと、結果として適切でない言動が許されるという組織文化が出来上がります。その結果は、先ほどの通り、常に適切な言動をしている方から辞めていきます。その人の人格を否定するわけではないので、率直に組織における言動としてなぜ良くないのか、どう直すべきなのかを伝えましょう。何度か見逃していると、「今までは何も言わなかったのになぜ急に言ってくるのか?」とより指摘や改善が難しくなるので、早めに伝えるのがお互いにとって良いです。

安定した経営基盤を創る

最後のポイントは言うまでもありませんが、やはり「安定した経営基盤があることで適切な判断が下せる」という側面もあるので、経営者・管理者として数値結果をしっかりと出し続ける重要です。例えば、急いで規模を大きくしなければならない時などは採用基準を下げる方に気持ちが傾きますが、余裕があればじっくり採用選考を進めることができます。数か月先を見越した余力を創っておくことが、経営者や管理者の気持ちの余裕や柔軟な対応ができるため、利用者のためにも組織のためにも安定した経営基盤を創っていきましょう。

まとめ:経営力・マネジメント力を身に着けよう

本記事では、訪問看護の経営・マネジメントにおける負のサイクルと脱却のポイントをご紹介しました。読んでいて不安を感じた方もいらっしゃると思いますが、まずは構造を理解して組織や自らを客観的に振り返ることが負のサイクルの脱却や予防への第一歩です。

業界の課題として経営やマネジメントを学び・実践する場が非常に少ない課題もありますが、一部マネジメント研修なども開催されていますのでぜひそういった場で情報をインプットしてみることもおすすめです。

また株式会社UPDATEでは『訪問看護の経営・マネジメント研修』や『訪問看護経営・マネジメントアドバイザリー』等のサービスを提供しており、受講者同士のコミュニティーも創っています。「一般論ではなく実践的な学びを得たい」、「訪看経営・マネジメントの実践経験があるプロに相談に乗ってほしい」、「訪問看護の経営者や管理者同士で学び合える場に参加したい」方は、サービス内容が分かる資料をご用意しておりますので、一度確認してみてください。

経営者や管理者のマネジメントが組織を創り、利用者様への貢献につながる。また人財を育て、未来により優秀な人財を託していけると信じていますので、ぜひ一緒に負のサイクルに陥らず社会に貢献していける業界を創っていければ嬉しいです。

株式会社UPDATE
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小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ株式会社にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職の経営マネジメント人財育成のためマネジメントスクールを運営中。