人事制度づくりに使える補助金・助成金【令和8年度】訪問看護・介護事業所向け
「評価の基準が無いので、昇給をどう決めたらいいかわからない」「所長と主任を置いたけれど、役割と給与の関係を説明できない」
私たちUPDATEには、訪問看護ステーションの経営者からこうした相談がよく届きます。人事制度を整えたいという気持ちはあっても、外部に頼むと費用がかかるので後回しになっている、という声も少なくありません。
実は、人事制度づくりには使える補助金・助成金がいくつかあります。東京都には、コンサルティング費用を最大100万円まで全額補助する事業もあります。
この記事では、訪問看護・介護事業所が人事制度を整えるときに使える制度を、令和8年度の公式資料をもとに整理しました。なお、開業資金に使える助成金は「訪問看護ステーションの立ち上げに向け、活用できる助成金を詳しく解説」で別にまとめています。
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ訪問看護ステーション東京にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。その後、訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い、上場企業へのグループインを実現。現在は医療職マネジメント人財を育成するためマネジメントスクールを運営中。
■経歴
2013年 慶應義塾大学 看護医療学部 卒業
2013年 ケアプロ株式会社入社
2019年 株式会社UPDATE(旧:ヘルスケア共創パートナー株式会社) 創業 代表取締役(現職)
2021年 GOOD AID株式会社 取締役(事業譲渡により退任)
2023年 セルフケア薬局 取締役(吸収合併により退任)
2023年 まちほけ株式会社 代表取締役(事業譲渡により退任)
■得意領域
医療系事業の組織マネジメント
教育体制構築
採用戦略・体制構築
教育体制構築
新卒訪問看護師の育成
管理職の育成
■保有資格・学位
看護師
保健師
経営学修士(MBA)
目次
まず押さえたいこと:令和8年6月から、訪問看護も処遇改善加算の対象になった
補助金の話に入る前に、人事制度を整える理由がひとつ増えたことをお伝えしておきます。
令和8年度の介護報酬改定で、これまで介護職員等処遇改善加算の対象外だった訪問看護に、加算が新設されました。介護保険の訪問看護(介護予防を含む)の加算率は1.8%です。
訪問看護が算定するには、次のどちらかを満たす必要があります。
| ルート | 必要なこと |
|---|---|
| 加算Ⅳに準ずる要件 | キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件を満たす。申請時点では「令和8年度中に整える」という誓約で算定できる |
| 令和8年度特例要件 | 訪問サービスの場合、ケアプランデータ連携システムに加入して実績を報告する、など |
前者を選んだ場合、年度内に次の2つを整えることになります。
- キャリアパス要件Ⅰ 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と、それに応じた賃金体系を決め、就業規則などに書いて職員に周知する
- キャリアパス要件Ⅱ 職員と話し合いながら資質向上の目標と計画をつくり、研修や能力評価を行う
これはほぼ「等級制度」と「教育研修制度」をつくることと同じです。人事制度を整えれば、加算の要件にもそのまま使えます。評価制度の中身は「訪問看護での人事評価の重要性と実践方法」で詳しく解説しています。
医療・介護・福祉の人事制度づくり
評価や昇給の決め方を、管理者と一緒につくりませんか
UPDATEの人事制度設計コンサルティングは、等級・評価・賃金・教育研修の仕組みを、管理者と一緒に設計し、運用まで伴走します。東京都の補助金を使う場合の回数や議事録の要件にも合わせて進めます。
人事制度づくりに使える補助金・助成金の一覧
| 制度 | 実施 | 対象 | 何に対して出るか | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 人材育成促進支援事業(申請区分ア) | 東京都 | 都内の介護保険サービス事業所(訪問看護を含む) | 人事給与制度のコンサルティング費用+研修受講費 | 1法人100万円まで・補助率10/10 |
| 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース) | 厚生労働省 | 雇用保険の適用事業主(業種を問わない) | 人事評価制度などの制度を導入したこと | 人事評価制度は80万円(賃金要件を満たすと100万円) |
| 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 厚生労働省 | 同上 | 職員に受けさせた外部研修 | 受講費の45%〜+1時間800円〜の賃金助成(中小企業・正社員の場合) |
| 都道府県の専門家派遣 | 各都道府県 | 県によって異なる | 処遇改善加算の要件整備の相談 | 無料(社会保険労務士の派遣など) |
ひとつずつ見ていきます。
東京都「人材育成促進支援事業」:コンサル費用を最大100万円まで全額補助
東京都の介護事業所であれば、まず検討したいのがこの事業です。正式名称は「介護現場改革促進事業補助金(人材育成促進支援事業分)」で、東京都福祉保健財団が事務を担っています。令和8年度から、人事給与制度づくりのメニュー(申請区分ア)が新しくできました。
| 項目 | 申請区分ア(人事給与制度)の内容 |
|---|---|
| 対象 | 令和8年4月1日時点で都内に開設している、介護保険法のサービスの事業所(訪問看護を含む)。障害福祉サービスの事業所は対象外 |
| 補助基準額・補助率 | 1法人あたり100万円・10/10 |
| 対象経費 | ①コンサルティング経費(必須)②研修受講・資格取得経費 ③代替職員経費。②と③は合わせて35万円まで |
| コンサルティングの要件 | 年度内に4回以上、各回1時間以上、うち1回以上は対面。現状把握・課題分析・改善策の検討と実行・組織内での共有の4段階をすべて含む |
| 使える期間 | 法人単位で令和8年度から最長3年間(令和9年度以降の実施は都が「未定」としている) |
| 令和8年度の申請締切 | 2026年11月6日(金)必着 |
②の研修受講経費には、管理者向けのマネジメント研修も対象例として挙がっています。人事制度づくりと、評価する側の管理者の育成を同じ年度に進められるのが、この事業の使いやすいところです。
対象経費の細かい条件、4回のコンサルティングの組み方、交付決定前に始める必要があるスケジュール、申請前にそろえる書類は、「東京都の人材育成促進支援事業とは?人事制度に最大100万円【令和8年度】」で詳しく解説しています。
人材確保等支援助成金:人事評価制度を入れると80万円
国の助成金で人事制度と直接つながるのがこれです。業種を問わないので、病院・クリニック・障害福祉の事業所も使えます。
以前は「人事評価改善等助成コース」という名前で知られていましたが、このコースは廃止されています。人事評価制度への助成は、現在は雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの一メニューです。
| 導入する制度 | 助成額(賃金要件を満たした場合) |
|---|---|
| 人事評価制度 | 80万円(100万円) |
| 賃金規定制度(中小企業のみ)・諸手当等制度 | 各40万円(50万円) |
| 職場活性化制度(メンター制度など)・健康づくり制度 | 各20万円(25万円) |
コース全体の上限は230万円(賃金要件を満たすと325万円)です。
人事評価制度として認められる条件
- 労働組合または労働者の過半数代表と合意している
- 評価の対象・基準・方法が明確で、職員に開示している
- 年齢や勤続年数だけで決まるものではなく、能力・行動・成果など本人の努力で上げられる項目で評価する
- 評価期間が1年以内で、年1回以上評価する
- 評価の結果が賃金(手当・賞与を含む)に反映される
注意したいこと
制度を最初に導入する月の初日から数えて6か月前から1か月前までに、整備計画を労働局に出して認定を受ける必要があります。「制度をつくってから申請」では間に合いません。
また、計画期間の終了後12か月の離職率を、計画時より下げることが支給の条件です(9人以下の事業所は「上回らない」で足ります)。
もうひとつ、この助成金は制度を導入したことに対する定額の助成で、コンサル費用そのものを補助するものではありません。東京都の事業とは性格が違います。
東京都の事業と組み合わせる場合、都の要綱は「同じ対象経費で他の補助金等を重ねて受けることはできない」としています。国の助成金は経費ではなく定額の助成なので性格は違いますが、併用を考える場合は、東京都福祉保健財団と労働局の両方に事前に確認してください。
人材開発支援助成金:管理職研修の受講費に使える
所長・主任を外部の研修に出す場合に使える助成金です。
中小企業が正社員に10時間以上の研修(OFF-JT)を受けさせた場合、受講費の45%(賃金要件を満たすと60%)と、研修時間1時間あたり800円(同1,000円)の賃金助成が受けられます。
ただし、厚労省の資料では次のものが助成対象外と明記されています。
- コンサルタントによる経営改善の指導
- 社内制度・組織・人事規則に関する説明
人事制度を「つくる」費用には使えません。使えるのは、管理職がマネジメントを学ぶ研修の部分です。こちらも、研修を始める6か月前から1か月前までに計画届を出す必要があります。
都道府県の無料の専門家派遣も確認を
人事制度の構築費を直接補助する事業は、令和8年度については東京都以外で見つけられませんでした。その代わり、処遇改善加算の要件整備を無料で支援する事業を行っている県があります。
- 千葉県 介護職員等処遇改善加算取得支援事業。社会保険労務士を無料で派遣(2回まで)。訪問看護など新しく加算の対象になったサービスも含むと明記されている(千葉市は除く)
- 茨城県 社労士の個別訪問とセミナー。窓口は介護労働安定センター茨城支部
お住まいの都道府県の介護保険担当課や、介護労働安定センターの支部に問い合わせると、地域の事業がわかります。
補助金を使って人事制度をつくるときに、気をつけたいこと
ここからは、私たちが相談を受けるなかで感じていることです。
補助金には締切と要件があるので、どうしても「申請に間に合わせること」が目的になりがちです。でも、人事制度は運用してはじめて意味があります。
たとえば、退職を申し出た職員を引き止めるために給与を上げると、頑張っている職員の給与は上がらないという矛盾が生まれます。それを知った職員が辞めていく。私たちが支援してきた事業所でも、何度か見てきた流れです。評価と昇給の基準をつくるのは、この流れを止めるためです。
基準をつくっても、評価するのは所長や主任です。評価の面談をしたことがない管理者に評価シートだけを渡しても、制度は動きません。
東京都の事業が「設計から運用・定着まで」を条件にしているのも、同じ理由だと思います。
人材定着や収支を含めた経営全体の考え方は、「訪問看護の経営完全ガイド」にまとめています。制度づくりと並行して、管理者が評価や面談を経験しながら覚えていく時間をとっておくと、制度が根付きやすくなります。
よくある質問
Q. 訪問看護ステーションは東京都の補助金の対象ですか?
A. 介護保険の指定を受けている訪問看護ステーションは対象です。令和8年4月1日時点で開設している必要があります。
Q. 補助金の申請はコンサル会社に代行してもらえますか?
A. 申請は事業所が行います。コンサル会社が用意するのは、契約書・仕様書・会社案内など申請に必要な書類です。(申請書類の作成代行は、自治体の補助金なら行政書士、国の雇用関係の助成金なら社会保険労務士の業務にあたります)
Q. 不採択になったら、コンサル費用は戻ってきますか?
A. 一般的には戻りません。補助金の採択を条件にした契約かどうか、事前に確認しておくと安心です。
Q. 10人以下の小さな事業所でも使えますか?
A. 東京都の事業も国の助成金も、規模の下限はありません。都の手引きにも、小規模事業所は無理のない範囲で取り組めばよいと書かれています。
参考資料
- 東京都福祉保健財団「令和8年度 人材育成促進支援事業」 https://www.fukushizaidan.jp/206genbakaikaku/jinzai/
・交付要綱(8福祉高介第1292号・令和8年10月1日)、事業概要、申請区分アの手引き(令和8年9月)、Q&A - 厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00005.html
・リーフレット https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688569.pdf /支給要領(R8.4.8改正) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688529.pdf - 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
・人材育成支援コース詳細版(R8.8.3) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731967.pdf - 厚生労働省「令和8年度 介護報酬改定(処遇改善)」 https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/5_R8_houshuu_kaitei.pdf
- 千葉県「介護職員等処遇改善加算取得支援事業」 https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/service/syoguu-shien.html
- 茨城県「介護職員等処遇改善加算取得促進支援事業」 https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/chofuku/jigyo/kaigo/jigyosha/h24santeitodokede/shoguukaizen-shutokusokushin.html
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人事制度づくりのご相談
UPDATEは、訪問看護ステーションの組織マネジメントを専門に支援してきた会社です。人事制度の設計では、看護師・リハ職・事務が混在する職種構成や、管理者自身も訪問に出ている現場を前提に、管理者と一緒に制度をつくります。処遇改善加算のキャリアパス要件を意識した制度設計や、補助金を使う場合の要件に合わせた進め方にも対応しています。
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