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なぜ7名くらいから組織がまとまらなくなるのか?【訪問看護マネジメントナレッジ04】

なぜ7名くらいから組織がまとまらなくなるのか?

訪問看護事業所を設立し、最初は一致団結していた組織が、突如としてまとまらなくなってしまう。また、創業初期に貢献してくれていた人材が離脱し、連鎖退職が起きる。このような感覚や経験を持つ方も少なくないと思います。このような症状は、組織の拡大期によく見られる現象で、特に訪問看護においてはスタッフ数7~15人程度で停滞してしまうケースも少なくありません。
そこで、本記事では、組織拡大期に陥りがちな組織の停滞の背景と対処法について、皆様の組織マネジメント力向上のためになるナレッジをご紹介いたします。

スタッフ7名程度から組織がまとまらなくなる原因

スタッフが7名程度になってくると、組織が急にまとまらなくなり、最悪のケースはそこから負のサイクルに入ってしまうことがあります。その背景は、大きく5つの要因があります。

  1. コミュニケーションラインの急増する
  2. 組織に必要な役割が多様化する
  3. 多様な価値観を持った人材が参画する
  4. ミスマッチ人財が参画する
  5. 入職初期のオンボーディング体制が整っていない

コミュニケーションラインの急増する

スタッフ数が増えると、頭数とは異なり、個々のコミュニケーションのラインが指数関数的に増えます。しかし、そのことに気が付いていない方が多く、その増加に対して適切なマネジメントが出来ていないことが、組織のまとまりがなくなる大きな要因となっています。

どのように増えていくかというと、3人の組織ではコミュニケーションは3ラインですが、4人だと6ライン、8人だと28ラインになります。8人というと、大きなテーブルを囲んでみんなで会議を行える人数で大所帯というイメージは全くないですが、個々のコミュニケーションラインの数は28本になっており、創業初期の3~5人で阿吽の呼吸で組織を回していた時期とは明らかに状況が異なります。

この点に気が付かず、今まで通りのマネジメントを続けることで、各メンバーに組織の方針や理念が伝わりきらない、メンバー間で解釈やコミュニケーションのズレが起きる、という症状が生じます。

組織に必要な役割が多様化する

立ち上げ初期は、何よりも依頼をもらわないと価値を発揮できないので、「しっかり地域のケアマネさんと関係を創り、まずは生産性をあげること」と組織の目標ややるべきことがシンプルです。

しかし、7名くらいだと最低限の生産性の足元が固まり、規模拡大に向けた仕組みづくり、現場の質向上、新入職者を迎え入れる体制づくり、ベースとなる訪問業務を回すことなど、組織に必要な役割が多様化します。
最低限足元が固まったと言っても、組織の中は粗々で走りながら仕組みを創っている状態。そのため、各々が全体像が見えないまま各役割を遂行することで、組織が部分最適になり始めます。

この時、メンバーによって役割が分かれ始めていること、その中で各々が自らの役割に部分最適思考になり始めることへの対応が遅れ、組織の中でバラバラに動いている状況に陥ったり、メンバー同士の軋轢が生じ始めます。

多様な価値観を持った人材が参画する

規模を拡大していく過程で、立ち上げに興味ある人だけでなく、現場の質向上に関心がある人、自らの専門領域で価値を発揮したい方、家庭がありやることはやるけど仕事が一番ではない方、など色んな人が組織に参画されます。
それぞれの価値観自体は、各個人が大事にしていることや仕事に向かう上でのバックグラウンドとして、どれも善し悪しで評価するようなものではないですが、組織がまとまらなく原因としては、それぞれが自分の価値観をベースに動くようになることで、組織がまとまらなくなることがあります。

その状態に上手くフィードバックができず、「いいことをしてるはずなのに、なぜ指摘されなければならないのか?」と管理者と個人で摩擦が起きる。次第に管理者側フィードバックすることを躊躇する。個人の価値観ベースでの動き加速し、メンバー間の摩擦が大きくなる。というプロセスで、最終的に組織が「なんでもあり」な状態となって崩壊していきます。

ミスマッチ人財が参画する

単純に採用スキル不足による要素が大きいですが、組織が成長する過程で地域に貢献したい意欲にかられ、多くの方が採用基準を下げて採用をしてしまうことで、方針に合わない方・利己的な方・スキルはあっても周囲と連携できない方などを入れてしまいがちです。
この時、よく採用した管理者や経営者も「多様性が大事」という一言で完結してしまいがちですが、組織が成長する過程で必要な多様性と、組織の軸から離れた利己的な主張は別物で、明確に採用プロセスで評価する必要があります。規模化して色んな人が働ける職場にするという名目で、そもそも組織の方向性にマッチしない人材を迎え入れてしまい、組織が壊れることがあります。

入職初期のオンボーディングの体制が不十分

組織が初めて規模拡大を目指す時は、会社の方針や目指すもの、あるべきメンバーの姿勢・心構え、また我々がやらないこと・許容しないことなどを十分にオンボーディングする体制が整ってないケースがほとんどです。そのため、①~④のような背景がある中で、現場に関する教育はするものの、組織人としての育成は入社したきり個人に委ねられる。そのため、個人の考えて動かざるを得ず、各々が個人の考えで動くためまとまらない、というサイクルに至ります。

スタッフ規模が大きくなっても一体感を持つ組織を創るために

上記のような原因で、一見さほど大きな規模でなくても、組織マネジメントをしっかりと考え実践しないことで、組織は一体感を失います。また、一体感がなくなるだけでなく、負のサイクルに陥りどんどん組織のあるべき姿からかけ離れてしまうこともあります。そのような状況を回避し、規模が大きくなっても一体感を持ち続けるには、以下のようなマネジメントが重要になります。

組織の軸を掲げ続ける

「事業(の目的)が主であり、その実現のために仲間が集まり、組織を形成している」という軸を持ち、ブレずにメンバーに伝え続ける・日々の言動で意味づけることが重要です。多様な人材が参画することは強みにもなりますが、それぞれが組織の軸を持たずに個人で動くことは組織を弱くします。

コミュニケーション・ラインに合わせた結節点人材の配置

指数関数的に増えるコミュニケーションラインをマネジメントするには、コミュニケーションを取るチームを分けていくことが重要です。そのためには、経営者や管理者とメンバーを繋ぐ『結節点人財』を配置することが重要です。メンバーが5名以上になったら、早めに次のリーダー育成に着手しましょう。

採用基準は絶対に下げてはいけない。

コミュニケーションラインの増加や組織の求める役割の多様化は避けては通れない道ですが、このような状況に利己的な人財やそもそも組織の目指す方針やスタンスに合わない人財が入ることで組織が崩壊することも少なくありません。つい、どんな人でも育ててあげたい・早く増員して地域に貢献したいという衝動にかられますが、誰をバスに乗せるかで組織の在り方が決まると言っても過言ではないので、絶対に妥協した採用は行わないようにしましょう。

創業初期から入職者へのオンボーディング体制を構築する

組織にマッチした人財でも、入職初期に組織の方向性やスタンスが示されないことには、自らの考えで動かざるを得ません。そのため、入職時に日常業務に関する説明だけでなく、組織の離縁・目標、なぜそれを目指すのか、求める役割やスタンス、私たちがやらないことなどを明文化し、入職初期にしっかりと伝えることが重要です。

さいごに

これらの対策は、もちろん初めて事業所を立ち上げた方はいきなり完璧にはできないと思いますし、そもそも常にブラッシュアップしていくものなので、最初は粗々でも構いません。しかし、これらを意識して実施しようとするか否かで、拡大期に負のサイクルに陥る確率を減らすことができるので、ぜひ取り組んでいただければと思います。

また、UPDATEでは訪問看護での実践的な組織マネジメントを学ぶ「UPDATE訪問看護マネジメントスクール」を運営しています。より具体的にマネジメントを学びたいという方は、ぜひ詳細をご確認いただければ幸いです。

株式会社UPDATE
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小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ株式会社にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職の経営マネジメント人財育成のためマネジメントスクールを運営中。