Skip to content
KNOWLEDGE
お役立ち情報

訪問看護師の給与体系と年収相場|給与設計のポイントを解説

訪問看護給与

訪問看護師の給与制度の理解は、スタッフだけでなくマネジメント層にとっても重要です。自分自身の正当評価は仕事のモチベーション向上にもつながるため、安定した給与設定が人材の定着や看護サービスの質向上に不可欠です。また、基本給や各種手当・賞与や昇給の仕組みが明確であれば、将来的な収入の見通しを立てやすくなります。

そこで本記事では、訪問看護師の給与体系を詳しく解説します。給与設計のポイントや年収相場も紹介するので、訪問看護ステーションのマネジメント層の方はぜひ参考にしてください。

訪問看護師の平均給与は?

訪問看護師の平均給与は?

厚生労働省の調査によると、訪問看護師の平均給与は452,951円、年収に換算すると5,435,412円となっています。

訪問看護師の給与は勤務する地域や雇用形態・経験年数によって差があるため、必ず上記の通りになるとは限りませんが、年収約450万円〜600万円・月収約35万円〜50万円程度が平均的な金額となるでしょう。

また、常勤・非常勤の違いや、訪問件数に応じた手当の有無も金額に影響します。例えば、都市部の常勤訪問看護師で訪問件数が多くオンコール対応もある場合、年収600万円以上になるケースもあります。

このように訪問看護師の給与は、基本給に加えて各種手当や賞与が反映されるため、業務量や働き方によって幅があるのが特徴です。そのため、地域の相場や会社の経営状況を考慮しながら、適切な給与体系を設定する必要があります。

参照:令和4年度介護事業経営概況調査結果│厚生労働省

訪問看護師の給与体系

訪問看護師の給与体系は、基本給に加えて各種手当や賞与が支給されることで成り立っています。これらの組み合わせによって、年収や月収に大きな差が生じることもあります。訪問件数やオンコールの有無・緊急対応の頻度によって手当が加算されるため、働き方や勤務環境に応じた柔軟な報酬設計がされている点が特徴です。

基本給

訪問看護師の基本給は、勤務する法人の規模や地域・看護師の経験年数などによって異なります。一般的には月給25万円〜40万円程度が多く、年収では300万円〜480万円前後となります。

また会社によっては、訪問看護経験者には初任給で30万円以上が提示されることもあり、経験やスキルが反映されやすい項目です。基本給は賞与や社会保険料の算定基準にもなるため、収入の土台の大きな役割を果たしています。

訪問手当

訪問手当は、利用者様の自宅を訪問するごとに支給される手当で、訪問先までの距離や訪問回数によって金額が異なることが一般的です。月間の訪問件数が多い看護師ほど収入が増加しやすく、効率的に稼ぐことができます。

例えば、1件あたり1,000円の訪問手当が支給される場合、月に100件訪問すれば10万円が基本給に加算されます。訪問手当を取り入れている場合、一般的には「81件以上の訪問から対象」のように一定の訪問以降から発生するケースが多いです。訪問件数に応じた歩合的な側面があるため、業務量が収入に直結するのが特徴です。

オンコール手当

オンコール手当は、夜間や休日に緊急対応に備えて待機する時間に対して支給される手当です。手当の相場は1回あたり1,000円〜3,000円程度で、実際に出動した場合には別途手当が支給されることが多くなっています。

オンコール対応の有無は、訪問看護師の業務負担にも大きく関わるため、手当の支給額や回数のバランス調整が欠かせません。負担が大きい分、手当の金額が職場選びの一因にもなります。

緊急訪問手当

緊急訪問手当は、夜間などに急変対応などで訪問した場合に支給される手当です。1回あたり2,000円〜5,000円程度が相場となっており、地域や規模・時間帯によって金額に差があります。

特に深夜帯の訪問では高めの金額が設定されることが多く、負担の大きい業務に対する正当な報酬として位置付けられています。スタッフの負担軽減や意欲維持の観点からも慎重な金額設定が必要な手当です。

その他の手当

その他の手当には、通勤手当や資格手当・住宅手当などがあり、事業所によって支給内容は様々です。例えば、認定看護師資格を保有している場合、月額5,000円〜10,000円の資格手当が支給されることがあります。

また、訪問看護ステーションの管理者や教育担当者などには、役職手当が追加されるケースもあります。こうした手当は、基本給とは別にスタッフのモチベーション向上や責任への対価の役割を果たす、大切な給与体系の1つです。

賞与(ボーナス)

賞与は会社の経営状況やスタッフ個人の業績に応じた額が支給されるもので、賞与制度を取り入れている場合の支給回数は年1回が多く見られます。金額の相場は、基本給の1ヶ月〜2ヶ月分程度が1~2回の支給額となり、年間では1ヶ月〜2ヶ月分程度になるケースが多いです。

訪問件数や在籍年数・貢献度が評価に大きく反映される場合もあり、明確な評価制度と連動していることが望まれます。賞与制度の充実は、スタッフの定着率向上やモチベーションの維持に貢献します。

訪問看護師の手取り額に影響する控除の項目

訪問看護師の手取り額に影響する控除の項目

訪問看護師の給与は、手当や賞与を含めると高水準に見えることもありますが、実際の支給額は保険料や税金などの天引きが行われます。

各種控除によって引かれた実際の金額が少ないと、スタッフのモチベーションに大きく影響するため、しっかりマネジメント層もその項目を理解しておかなくてはなりません。ここでは、訪問看護師の手取りに影響を与える主な控除項目を詳しく解説します。

健康保険料

健康保険料は、医療費の一部負担や傷病手当金の支給が目的の、給与から差し引かれる項目です。会社員である訪問看護師は、協会けんぽや組合健保に加入しており、その保険料は標準報酬月額に基づいて決まります。健康保険料の計算方法は以下の通りです。

健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率

会社が保険料の半分を負担するため、個人の負担はその残りの半分となります。また、加入する保険の種類や地域によって保険料率が異なるため、実際の控除額には差があります。

厚生年金保険料

厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する公的年金制度です。老後の年金受給の基盤となるもので、現役時代から給与に応じた金額が差し引かれます。厚生年金保険料の計算方法は以下の通りです。

厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.3%(厚生年金保険料率)
※2025年5月現在

訪問看護師の多くは会社が半額を負担する仕組みが適用されるため、上記の計算で産出された額の半額が給与から差し引かれます。月収が高くなるほど差し引かれる額も増える傾向があるため、生活の大きな負担となると感じるスタッフもいるかもしれません。しかし、長期的に見ると将来の年金額に直結するため、大きな役割を持つ社会保険料の1つです。

雇用保険料

雇用保険とは、失業した人の生活維持や再雇用の支援を目的に給付金を支給する制度です。支払われた保険料は、失業時の給付や教育訓練給付の財源となり、控除はすべての労働者に適用されます。訪問看護師の雇用保険料の計算方法は以下の通りです。

雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

保険料率は業種や年度により変動しますが、令和7年度の雇用保険料率は、医療機関に該当する一般の事業で合計14.5/1,000と定められており、そのうち5.5/1,000が労働者の負担となります。

参照:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内│厚生労働省

介護保険料(40歳以上)

40歳以上になると介護保険料の支払いが義務化され、健康保険料と合わせて控除されます。厚生労働省の発表によると、令和5年度の介護保険料の平均負担額は約6,000円となっています。介護保険料の計算方法は以下の通りです。

介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率

金額は地域や所得額によって異なるため一概には言えませんが、訪問看護師が40歳を超えると、月に数千円程度が追加で差し引かれるようになることを覚えておきましょう。この負担は40歳未満では発生しませんが、中高年層の看護師にとっては手取りを減少させる要因となります。

参照:令和5年度 介護納付金の算定について(報告)│厚生労働省

所得税・住民税

所得税と住民税は、収入に応じて金額が変動し、手取り額に直接影響を与える税金です。所得税は累進課税制度に基づき、所得に応じて5%~45%の税率が適用されます。住民税は地域によって差がありますが、基本は10%が目安となっており、賞与にも課税されます。これらの税金は、年間の支払額も大きいため、金額は正確に把握しておきましょう。

訪問看護における賞与の設定ポイント

訪問看護において、賞与は給与の一部として大切な役割を果たします。スタッフの働きに対する評価を金銭面で示す機会でもあり、不適切な賞与制度の設計は人材の定着率やモチベーションの低下にもつながりかねません。そこでここでは、訪問看護ステーションでの賞与設定のポイントを紹介します。

賞与の支給回数と時期を固定する

賞与の支給回数や時期をあらかじめ定めておくことは、スタッフにとっての安心材料ともなります。安定した支給スケジュールは、収入の見通しを立てやすくし、生活設計にも良い影響を与えます。

例えば、6月と12月の年2回の支給体制の設定で、スタッフ側も評価のタイミングの把握が可能です。このように賞与の支給ルールの明確化は、職場への信頼感を高める要因となります。

賞与の算定基準を明確に示す

賞与の金額を決める基準は評価項目や要素を事前に提示しておくことが大切です。賞与は勤務態度など定性的な要素も評価に含むことが多いため、詳細な計算式を提示することは難しいかと思います。そのため、どのような要素で加点や減点を行うのか、評価する要素を伝えておきましょう。また、公平性を保つためにも、業務成績やチームへの貢献度などを可視化する仕組みを整える必要があります。

例えば、評価表や面談を通じてスタッフ本人に基準を周知できれば、納得感のある賞与支給が可能です。透明性の高い評価制度は、働く上での目標設定にも直結しやすくなります。

ステーションの収益や個人の業績に応じて賞与額を決定する

賞与の支給には、訪問看護ステーション全体の経営状況やスタッフ個人の貢献度を反映させる業績連動型の制度が効果的です。業績に連動した賞与制度は、売上や訪問件数の向上を促し、組織全体のパフォーマンスアップにつながります。

実際に、月間の訪問件数や利用者様対応の質などに基づいて変動する賞与制度を導入するステーションも増えています。このような成果型の設計は、努力に応じて報酬が増えるため、やりがいを感じやすい方法です。

関連記事:訪問看護における「目標設定」と「フィードバック」管理者が注意すべき5つのポイントを徹底解説!

訪問看護における昇給の設定ポイント

訪問看護における昇給の設定ポイント

訪問看護の現場では、適切な昇給制度の整備が人材定着やモチベーションの維持に大きく影響を与える要素の1つです。昇給の仕組みが明確で納得感のあるものであれば、長く働き続けたいと思える環境づくりにもつながります。ここでは、訪問看護での昇給設定のポイントを解説します。

定期昇給と成果昇給を組み合わせる

安定した昇給制度には、一定年数ごとに給与が上がる定期昇給に加え、業績や評価に応じた成果昇給を組み合わせる方法があります。定期昇給は勤続年数に応じた基本的な処遇改善、成果昇給は仕事への取り組み姿勢や成果を反映させるものです。

1年に1回基本給が見直される一方で、目標達成度に応じて成果給の上乗せがある制度を組み合わせる方法がその一例です。このような構成により、公平性と意欲の両立が期待できます。

キャリアパスに連動した昇給制度を活用する

訪問看護師のスキルや役割に応じたキャリアパスを明確にし、それに沿った昇給制度を設けることが大切です。経験や資格の取得に応じて、職位や担当業務が変わる仕組みを作ることで、個々の成長が処遇に反映されやすくなります。

具体的には、初任者から主任・管理者へと段階的に昇格する中で、それぞれの役職に応じた給与テーブルを設定する方法があります。これにより、将来の展望を持ちやすくなり、長期的な定着にもつながるでしょう。

スタッフのモチベーションを高めるインセンティブ制度の導入

基本的な昇給制度に加え、日々の働きがいを高めるためのインセンティブ制度も効果的です。個人やチームの成果に応じた一時的な報奨金や手当の支給によって、短期的な目標への意欲が高まります。

例えば、訪問件数や利用者様の満足度アンケート・スキルなどで一定の基準を満たしたスタッフに対してインセンティブを付与するなど、取り組みに応じた評価がされる仕組みを取り入れている事業所もあります。こうした工夫が、職場全体の活性化や人材の定着率向上につながるでしょう。

関連記事:訪問看護師が辞める理由とは?負担軽減の解決策について紹介!

まとめ

訪問看護師の給与は基本給に加え、訪問手当やオンコール手当など多様な手当で構成されています。特に賞与や昇給は、スタッフのモチベーションに大きく影響するため、適切な場面での適切な額の支給が求められます。安定した制度設計はスタッフの定着率と看護サービスの質の向上に不可欠です。

UPDATEでは、給与の設定に関する考え方をはじめ、訪問看護ステーションの実践的なマネジメントが学べる『訪問看護マネジメントスクール』や『人事・組織構築コンサルティングサービス』を提供しています。スタッフの業績評価や給与設定に不安のある方は、お気軽にお問合せください。

小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
株式会社UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ訪問看護ステーション東京にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。その後、訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職マネジメント人財を育成するためマネジメントスクールを運営中。