組織のコミュニケーションラインに合わせたマネジメントとは?訪問看護の組織づくりの要点を解説
訪問看護ステーションを運営するなかで、「スタッフ間の関係性が悪化して困っている」「スタッフが退職を申し出るまで問題に気付けなかった」などの問題を抱える管理者は少なくありません。組織コミュニケーションのマネジメントは、健全な組織体制を作り、事業基盤を整える上で重要です。
この記事では、現場で発生しやすいコミュニケーション上の問題を深掘りしていきます。また、解決策の一つである、コミュニケーションラインに合わせたマネジメントについて解説します。
目次
訪問看護における組織コミュニケーション・マネジメントの重要性
組織におけるコミュニケーションの問題点を放置すると、組織全体が良くない方向に傾いてしまう恐れがあります。ここでは、現場で発生しがちなコミュニケーションの問題点と、問題点をそのままにした場合に起こりうるパターンを解説します。
訪問看護の現場で発生しがちなコミュニケーションの問題点
訪問看護の現場で発生しやすいコミュニケーション上の問題点として、以下が挙げられます。
- 規模が大きくなるにつれ、組織の理念・基準の浸透が難しくなる
- 「管理者」と「メンバー」間、「経営」と「現場」での隔たりができる
- 性格や考えが合う合わない問題が定期的に発生している
- 主体的に動くメンバーがいつも同じになってくる
- 経営者・管理者の目が届かなくなり、問題に気が付くのが遅れる
問題点を放置するとどうなるか?
コミュニケーションにおけるこれらの問題点をそのままにしておくと、具体的にどのようなことが起こるでしょうか?起こりうることとして、以下の5つのパターンが考えられます。
- 方向性不一致
- 上下の対立
- 左右の対立
- 主体性の二極化
- 生存バイアス
続いて、それぞれについて具体的に解説します。
方向性不一致
1つ目に考えられるのは、自由奔放でまとまりがなく、各々が個人の考え・好みで動いてしまうパターンです。結果的に組織としての方針・方向性が薄まり求心力が弱まる恐れがあります。
上下の対立
「経営者と現場」や「組織と個人」という虚像の対立構造を構築し始めるパターンも考えられます。その結果、会社や組織の一員である意識がなくなり、コミュニケーションすら拒絶し始める場合もあるでしょう。
左右の対立
また、部門や個人間の対立構造を構築し始めるパターンもあるでしょう。自分や所属する部門を中心とした行動を取り始め、全体で協力し合えない組織になる可能性があります。
主体性の二極化
さらに、主体的に動くメンバーと動けないメンバーが二極化することも考えられます。このような二極化が進行すると、主体的に動ける人財に業務が偏り、押し寄せるプレッシャーに疲弊してしまう恐れがあります。
生存者バイアス
5つ目のパターンとして、個人を起因とした理由で強者・弱者が発生し、弱者が離脱していく場合が考えられます。組織の方向性とは関係のないスタッフの離脱により、組織内の文化が変化し、発言力の強いスタッフの傾向が強まる可能性があります。
組織コミュニケーションの問題における4つの原因
組織コミュニケーションの問題を引き起こす原因として、以下の4点が考えられます。
- コミュニケーションラインの増加に対応できていない
- 共通目的・組織ルールの浸透不足
- コミュニケーション力不足
- 組織文化の醸成不足
このうち、コミュニケーションラインのマネジメントについて、詳しく解説していきます。その他の原因と対策については、UPDATE 訪問看護マネジメントスクールにて解説しています。訪問看護マネジメントの経験者による、実践的な内容を体系的に学べるのが特徴ですので、詳しく学びたい方はぜひ内容をご覧ください。
コミュニケーションラインのマネジメントのコツ
コミュニケーションラインという考え方に、馴染みのない方もいるかもしれません。組織のスタッフ一人ひとりの関係性を結ぶ線を、コミュニケーションラインといいます。例えば、スタッフ数が3人ならコミュニケーションラインは3本、スタッフ数が4人ならコミュニケーションラインは6本、8人なら28本です。
コミュニケーションラインの増え方を意識する
組織の規模を考える際は、単なるスタッフ数ではなく、スタッフ一人ひとりの関係性を結ぶコミュニケーションラインがどれだけ増えたかを考えることが重要です。
なお、16名のチームになる場合、コミュニケーションラインは120本にも及びます。このように、スタッフ数が増えれば増えるほど、コミュニケーションラインは急激に増加し複雑になります。
実際の現場では、AさんとBさんは直接話をしたがらず、Cさんを介さないと話ができないといったコミュニケーション上の問題が発生することが考えられます。
このように、カウントできないコミュニケーションラインや消えかかっているコミュニケーションラインがあるなど、問題を抱えている現場は少なくないでしょう。
結節点人財の意図的な配置
コミュニケーションラインが多くなると、リーダーが全てを管理することは難しくなります。そのため、リーダーとメンバーを仲介する役割を持つ、結節点人財を活用することが鍵となります。結節点人財を意図的に配置し、効果的に活用することが重要です。
結節点人財活躍のコツ
結節点人財が活躍するためには、以下の4つのコツがあります。
- 結節点人財の役割・傾向と課題の擦り合わせ
- 3階層での方針の擦り合わせ
- 相互フォローできる体制の構築
- 一次情報のモニタリング
それぞれについて詳しくみていきましょう。
結節点人財の役割・傾向と課題の擦り合わせ
結節点人財となるスタッフに対し、組織のリーダーとメンバーを仲介する役割があることを伝える必要があります。リーダーが一方的に役割を期待しているだけでは、結節点人財が十分な役割を果たせず、日々の業務管理をこなすだけになってしまう可能性があります。
また、結節点人財としてうまく立ち回れるよう、課題を擦り合わせながらフォローすることも重要です。
さらに、結節点人財と役割の擦り合わせをする際には、長期的な経営視点と短期的な現場視点の両方の視点をバランス良く持つように伝えることが大切です。
結節点人財がうまく効果を発揮できない場合の傾向として、以下の4つの傾向が挙げられます。
- 現場に視点が寄りすぎるタイプ
- 経営に寄りすぎるタイプ
- 自部門に寄りすぎるタイプ
- 完全暴走タイプ
結節点人財となるスタッフには、これらのタイプについて知ってもらい、事前に自身がどのタイプに陥る可能性があるかを予想してもらうことも有効です。事前に4つの傾向を知っておくことで、うまくいかない場面でも客観的かつ冷静に対処しやすくなるでしょう。
それぞれのタイプに応じた具体的な課題については、UPDATE 訪問看護マネジメントスクールにて解説しています。訪問看護や薬局など、250名規模の事業マネジメントで培ったナレッジをもとにした、リアルな実践を想定したマネジメントを学ぶことが可能です。
3階層での方針の擦り合わせ
結節点人財が、いきなり単独でリーダーの考えやメンバーの思いを伝達しようとすると、各者との認識のズレが生じる恐れがあります。結節点人財の経験が少ない場合は特に、リーダーから伝えられた組織の方針がズレてメンバーに伝わったり、メンバーの思いや意図がズレてリーダーに伝わったりすることもあるでしょう。
そこで効果的なのが、1on1on1方式での認識合わせです。リーダー・結節点人財・メンバーの、3階層での認識を合わせるようにするのが効果的です。メンバーは一人ずつでなくても問題ありません。3階層で組織の方向性や現場の課題を擦り合わせることで、3者の認識のズレを回避できます。
相互フォローできる体制の構築
結節点人財は責任感が強いだけでなく、現場に寄り添う気持ちも強い場合が多いことから、
結節点人財一人に負担が偏ってしまうこともあるでしょう。そのため、結節点人財を一人にせず、複数名でチームを形成することが重要です。
また一定規模のチームは、チーム内で両翼のチーム配置を形成するのも有効です。例えば、訪問看護ステーションにおける新任の所長を立てた場合を考えてみましょう。新任所長の右腕・左腕となって助けるような人物を適切に配置し、小規模マネジメントチームを作るようにすると、よりプレッシャーに強い組織体制を作ることができます。
一次情報のモニタリング
リーダーと結節点人財との直接的なやりとりだけでは、結節点人財がうまく立ち回れていない場合があっても、すぐには発見できないことがあります。リーダーは結節点人財とのコミュニケーションラインからだけでなく、メンバーの現場や事業所の中の状況など、一次情報を積極的に取りにいくことが重要です。一次情報をモニタリングする上でのポイントは以下の3点です。
- 複数名でメンバーとの関係を構築し、複数の情報源を持つこと
- 結節点人財やメンバーと、定期的に1on1コミュニケーションを取る
- 日報・週報による状況の定点観測で、メンバーをフォローする
これらのポイントを抑え、定期的に一次情報を入手すると、結節点人財の効果的なマネジメントにつながるでしょう。
まとめ:訪問看護では結節点人財の活用が組織コミュニケーションのポイント
この記事では、組織のコミュニケーションラインに合わせたマネジメントについて解説してきました。
組織の規模が大きくなればなるほど、コミュニケーションラインは増大していきます。コミュニケーションラインの増え方を意識し、管理者とメンバーを仲介する結節点人財を効果的に活用することが、組織のコミュニケーション管理のコツです。株式会社UPDATEでは、「実践的なマネジメントを学べば、医療はもっと良くなる。」というビジョンのもと、訪問看護ステーション運営に必要な知識が体系的に学べるマネジメント講座を実施しています。詳細に関する資料をご用意しているほか、無料相談も実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。