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訪問看護特別管理加算とは?医療保険・介護保険別の要点を徹底解説

訪問看護特別管理加算

在宅で生活される利用者様の中には、高度な医療的ケアを要する方も少なくありません。そうした利用者様を支える訪問看護を行う際は、「特別管理加算」が加算対象となる場合があります。加算の条件を正しく理解し、対象となる場合は適切に加算算定を行うことが重要です。

本記事では、管理者や経営者の視点を中心に、医療保険・介護保険別の特別管理加算の概要や算定要件、請求時の注意点を詳しくまとめ、組織全体の運営を最適化する考え方を探ります。

特別管理加算の概要と背景

特別管理加算の概要と背景

訪問看護の特別管理加算は、高度な管理が必要な利用者様に対して、専門的かつ計画的なケアを行う事業所を評価する仕組みです。医療保険・介護保険の両方に設定されており、利用者様の状態に応じて複数の区分に分かれています。まずは加算誕生の背景と、管理者が把握すべき全体像を整理し、実務や運営に役立てましょう。

訪問看護と特別管理加算の位置づけ

訪問看護では、日常的な健康管理から医療的ケアまで多岐にわたるサービスを提供します。その中で、人工呼吸器の管理や在宅酸素療法など、特に専門性が高いケアを要する利用者様が増えている点が注目されています。特別管理加算は、こうした方々の状態を手厚く管理し、リスクを抑えながら在宅療養を継続できるようにする目的で設けられました。

管理者や経営者としては、単に加算を取得するだけでなく、スタッフ教育や訪問看護計画書の精査を通じて、質の高いケアが常に提供されているかをチェックすることが大切です。加算の取得はサービスの質を保つ一助であると同時に、事業所運営の安定にも影響を与えます。

関連記事:訪問看護計画書の書き方のポイント!目標の記入例も紹介!

医療保険と介護保険の両面で重要な理由

訪問看護の利用者様は、医療保険適用となる場合と、介護保険適用となる場合があり、それぞれの保険制度で特別管理加算の要件や区分が微妙に異なります利用者様が医療保険を利用している場合には、より高度な医療的ケアが必要となる可能性が高く、医師との情報共有や正確な指示書が不可欠です。

一方、介護保険の利用者様でも、人工肛門や褥瘡への対応など特別な管理が求められるケースは少なくありません。管理者としては、それぞれの加算ルールを正確に把握し、請求ミスや漏れを防ぎながら、適切なケア環境を整えることが重要となります。

加算の適切な請求が求められる背景

超高齢社会が進むにつれ、自宅で暮らす利用者様が高度な医療的ケアを受ける機会は増えています。入院治療から在宅移行への流れが一般化し、訪問看護ステーションには複雑なケアを担うことが期待されています。

特別管理加算は、こうした利用者様を包括的に支える体制を評価し、さらに在宅ケアの質を向上させるために整備された側面があります。管理者が加算要件を正しく理解し、適切な算定に努めましょう。

介護保険における特別管理加算の要点

介護保険における特別管理加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類に区分され、対象となる利用者様の状態や医療的ケアの内容によって算定要件や単位数が異なります。事業所が加算を取得するためには、利用者様の正確なアセスメントと、訪問看護計画書への明確な記載が欠かせません。ここでは、介護保険の特別管理加算について重要なポイントをまとめます。

特別管理加算(Ⅰ)の特徴

介護保険での特別管理加算(Ⅰ)は、高度な医療的ケアを行う利用者様を対象としています。たとえば、在宅悪性腫瘍等患者指導管理の方や、気管カニューレを使用中のケースなどが典型例です。

この区分では1回500単位/月の加算が認められており、訪問看護計画書には利用者様の呼吸状態の観察内容や、血圧計・体温計・サチュレーションモニターなどの機器活用に関する記載が必要です。

特別管理加算(Ⅰ)の対象者

以下のいずれかに該当する利用者が対象となります。

・在宅麻薬等注射指導管理
・在宅腫瘍化学療法注射指導管理
・在宅強心剤持続投与指導管理
・在宅気管切開患者指導管理
・気管カニューレを使用している状態
・留置カテーテルを使用している状態

※2024年度の介護報酬改定で、特別管理加算(Ⅰ)の対象である「厚生労働大臣が定める状態のイに規定する状態」の内容に改定があり、新たに「在宅麻薬等注射指導管理」、「在宅腫瘍化学療法注射指導管理」、「在宅強心剤持続投与指導管理」が追加されています。

参考:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示,p623|厚生労働省

特別管理加算(Ⅱ)の特徴

特別管理加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)と比べてややリスクや複雑度の低い医療的ケアを指します。在宅自己腹膜灌流指導管理や在宅自己導尿指導管理のケースなどです。加算単位は月250単位で、褥瘡の悪化防止のための観察計画や、ご自宅での排泄ケアにおける留意点などが訪問看護計画書に盛り込まれます。

特別管理加算(Ⅱ)の対象者

以下のいずれかに該当する利用者

・在宅自己腹膜灌流指導管理
・在宅血液透析指導管理
・在宅酸素療法指導管理
・在宅中心静脈栄養法指導管理
・在宅成分栄養経管栄養法指導管理
・在宅自己導尿指導管理
・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
・在宅自己疼痛管理指導管理
・在宅肺高血圧症患者指導管理
・人工肛門、人工膀胱の設置
・真皮を越える褥瘡
・週3日以上の点滴注射

介護保険特別管理加算の取得手続きと注意点

特別管理加算を介護保険で請求するには、利用者様の要介護度や医師の指示内容を踏まえたうえで、事業所側が適切な加算区分を選択する必要があります。訪問看護計画書には対象となる医療的ケアの内容を明示し、月単位でケアを実施した記録を残すことが大切です。

また、複数の訪問看護ステーションを利用している利用者様については、他事業所との重複請求に注意しましょう。加算対象者の判定があいまいなまま請求すると、後日返戻や指摘を受けるリスクが高まるため、管理者や経営者は毎月の確認ミーティングを設定するなど、チェック体制を整えておくことが望ましいです。

医療保険における特別管理加算の要点

医療保険における特別管理加算の要点

医療保険での特別管理加算も、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分が設けられており、対象者や算定額、必要書類などが介護保険とは異なります。特に医療保険の場合は、医師の指示がより直接的に必要となるケースが多いため、医療機関との情報共有がスムーズかどうかが事業所運営の鍵となります。ここでは、その概要とポイントを解説します。

医療保険特別管理加算(Ⅰ)の概要

医療保険での特別管理加算(Ⅰ)は、気管カニューレを使用している方や在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態など、より高度な医療的ケアが求められる利用者様が対象です。概ね月額5000円ほどの加算が設けられており、訪問看護計画書への詳細な記載や、医師の指示書との整合性が求められます。

管理者は、看護スタッフが訪問時に得た情報を迅速に医師へフィードバックできる仕組みを構築し、利用者様の状態が急変した際の対応マニュアルを整備しておくことが大切です。特に気管カニューレの交換や中心静脈栄養ルートの管理においては、定期的な学習や技術向上のための研修が必要になるでしょう。

特別管理加算(Ⅰ)(特別な管理のうち重症度等の高い場合)の対象者

以下のいずれかに該当する利用者

・在宅麻薬等注射指導管理
・在宅腫瘍化学療法注射指導管理
・在宅強心剤持続投与指導管理
・在宅気管切開患者指導管理
・気管カニューレを使用している状態
・留置カテーテルを使用している状態

※2024年度の診療報酬改定で、特別管理加算の対象である「特掲診療料の施設基準等・別表第8」の内容に改定があり、新たに「在宅麻薬等注射指導管理」、「在宅腫瘍化学療法注射指導管理」、「在宅強心剤持続投与指導管理」が追加されています。

参考:特掲診療料の施設基準等,p5|厚生労働省

医療保険特別管理加算(Ⅱ)の概要

医療保険の特別管理加算(Ⅱ)は、人工肛門や人工膀胱の管理、褥瘡ケアなどが主な対象になります。算定額はおおむね月2500円ほどで、利用者様のケアに関する記録を詳細にまとめ、加算対象となる状態を裏付ける資料を用意しておく必要があります。

介護保険に比べると医師の関与が強く求められる側面があるため、利用者様が通院している医療機関や看護師との連携を密にし、訪問看護計画書の内容が最新の指示内容を反映しているか定期的にチェックすることが肝要です。管理者は、複数の医療機関とやり取りする場合に備えて、一元管理しやすい運用ルールを整えると良いでしょう。

特別な管理を必要とする利用者(重症度の高い利用者を除く)とは?

以下のいずれかに該当する利用者

・在宅自己腹膜灌流指導管理
・在宅血液透析指導管理
・在宅酸素療法指導管理
・在宅中心静脈栄養法指導管理
・在宅成分栄養経管栄養法指導管理
・在宅自己導尿指導管理
・在宅人工呼吸指導管理
・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
・在宅自己疼痛管理指導管理
・在宅肺高血圧症患者指導管理
・人工肛門、人工膀胱の設置
・真皮を越える褥瘡
・在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定

医療保険加算の留意点と不備防止策

医療保険の特別管理加算は、介護保険と比べて書類の整合性や医師の指示の正確性が厳密に問われることがあります。訪問看護計画書と看護記録、医師の指示書の内容が一致しないと、請求時に不備として扱われる可能性が高まるため、月ごとや四半期ごとに管理者がチェックする仕組みを導入すると安心です。

特別管理加算の対象者と算定時の注意点

特別管理加算の対象者は、(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらに該当するのかを的確に見極める必要があります。さらに、利用者様の状態が変化した場合や、複数の訪問看護ステーションを併用しているケースなど、実際の現場で起こりがちな事例への対策も重要です。管理者や経営者は、請求トラブルを防ぎながら適切なケアを維持するために、以下の点を押さえておきましょう。

対象者判定の流れ

特別管理加算を算定する際は、まずは利用者様の医療的ケアの内容を確認し、医師からの指示書や診断情報と照合します。気管カニューレや中心静脈栄養管理など、高度なケアが必要な場合には(Ⅰ)に該当しやすく、人工肛門や在宅気管切開患者指導管理などは(Ⅱ)に該当するケースが多いです。

ただし、呼吸器管理と人工肛門など、複数の要件を併せ持つ利用者様の場合は、単純に加算を重複して算定できるわけではないため、保険制度ごとのルールをよく確認しましょう。管理者はスタッフと協力し、訪問看護計画書へどのように記載するかを検討しながら、利用者様の状態を適切に分類することが必要です。

利用者様の状態変化と加算の切り替え

特別管理加算を算定している最中に、利用者様の状態が改善または悪化することは珍しくありません。たとえば、呼吸器管理が不要になった場合は(Ⅰ)から外れる可能性がありますし、新たに褥瘡が発生した場合は(Ⅱ)に該当することがあるでしょう。

こうした状況下では、毎月の訪問の中で利用者様の状態を逐一確認し、必要に応じて計画書や請求区分の変更を行うことが欠かせません。変更のタイミングを誤ると、加算を継続できないのに請求してしまう、または加算可能なのに気づかず算定しないなどのリスクが高まります。管理者が主導して定期的な会議や記録レビューを行うとスムーズです。

複数ステーション利用時の注意点

複数ステーション利用時、特別管理加算は原則として1ヵ所の訪問看護事業所でのみ算定可能です。しかし、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスの利用を確認後、訪問看護の中止を行い新たな事業所に切り替える場合は、その事業所でのみ算定が許可されます。

特に緊急時訪問看護加算や退院時共同指導加算も同じルールが適用され、誤算定を避けるためには利用事業所の変更の際に適切な手続きを行うことが重要です。

参照:厚生労働省老健局|介護保険最新情報

特別管理加算を活用した組織運営とマネジメント

特別管理加算を活用した組織運営とマネジメント

特別管理加算は、訪問看護ステーションの経営やスタッフ教育、リスク管理に直結する重要なポイントです。単に加算を取得するだけでなく、組織として品質の高いサービス提供を行うために、加算制度をどう生かすかを考えることで、より安定した運営が可能になります。最後に、加算を組織マネジメントに生かす視点をまとめます。

スタッフ教育とチーム力の向上

特別管理加算対象のケアは、通常より高度な技術や観察力を必要とします。そのため、管理者はスタッフが適切な技術を身につけられるよう、定期的に研修を開いたり、先輩スタッフが後輩を指導する仕組みを作ったりすることが効果的です。

また、医師やケアマネージャー、ヘルパーなど多職種での連携を強化し、在宅医療の知識を多面的に学べる機会を提供することも重要です。こうした学習環境の整備は、スタッフの定着率アップや利用者様への安定したケア提供にも直結し、結果的に特別管理加算の継続的な取得を支える基盤となります。

関連記事:訪問看護マネジメントでの「リーダーシップ」とは?人を率いるための3つのポイントを徹底解説!

リスク管理と緊急時の体制整備

特別管理加算を算定している利用者様は、医療的なリスクが比較的高いことが多いです。気管カニューレや中心静脈栄養ラインのトラブルが起きた場合、緊急性の高い対応が必要になるケースもあります。

管理者としては、緊急時の連絡ルールや、スタッフの即応体制を明確にし、休日や夜間でも一定のバックアップが取れるように組織体制を整備することが求められます。定期的なシミュレーションやマニュアルの更新を行い、万が一の場合にも迅速かつ的確な対応を可能にすることで、利用者様やご家族とのコミュニケーションもスムーズに進みます。

経営的視点からの継続的改善

特別管理加算を正確に算定し続けることは、事業の安定だけでなく、サービス品質の高さを示す指標にもなります。管理者や経営者は毎月の請求状況やスタッフの負担、利用者様の満足度などを総合的に捉えながら、必要に応じて業務フローや人員配置の見直しを行いましょう。

ICTツールを導入して記録や集計を自動化するなど、働き方を改善する方策を検討するのも一つの方法です。特別管理加算は、利用者様の安心を支える重要な財源である一方、サービスの質を客観的に評価し、組織として成長するためのきっかけにもなり得ます。

まとめ

訪問看護における特別管理加算は、高度な医療的ケアが必要な利用者様に対して専門性の高い看護を提供するための重要な仕組みです。医療保険・介護保険の区分ごとに要件や金額が異なり、対象者や状態変化の見極め、複数ステーション利用の調整などに注意が必要となります。

UPDATEでは、訪問看護のマネジメントに役立つ『訪問看護マネジメントスクール』を実施しております。経営や組織づくりにお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
株式会社UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ訪問看護ステーション東京にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。その後、訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職マネジメント人財を育成するためマネジメントスクールを運営中。