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2024.12.06

訪問看護の収益構造の特徴と損益分岐点の考え方

訪問看護事業の収益構造の特徴と損益分岐点の考え方

訪問看護事業の立ち上げを行う際は、訪問看護の事業特性からどのような収支への影響があるかを理解することが重要です。そのため、本コラムでは、これから訪問看護事業を立ち上げられる方を対象に、訪問看護事業の収支構造の特徴と損益分岐点の基礎知識について解説致します。

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訪問看護事業の特性から考える収益構造の特徴

訪問看護事業は「売上は変動しやすいが経費は変動しづらい」

 訪問看護事業の収支構造の特徴は、「売上は変動しやすい一方で、経費はその多くが固定費で変動しにくい」ことにあります。

まず、経費の観点から考えましょう。訪問看護ステーションで最も多くの割合を占める費用は何でしょうか。答えは、看護師の人件費です。事業所の規模によって異なりますが、次いで大きな経費は家賃や車両費(車のリース料など)などのところが多いでしょうか。これらの経費は、固定費といい、売上が減ったからと、急に減らすことができないものです。もちろん、入退職による人件費の増減はありますが、売上の変動に応じて意図的かつ端的敵に減らすことはできません。同様に、次いで高い賃料や車両費なども、短期的なコントロールが行えないようなものとなっております。また、その他細かい経費も含め訪問看護の事業にかかる各種経費は、そのほとんどが固定費である特徴があります。

 一方、売上はどうでしょうか。訪問看護の売上は看護師が利用者に訪問することによって発生しますが、ご入院やご逝去、訪問看護の卒業など急に訪問がなくなり売り上げが減少することがあります。当然、これらの変動はご利用者様の体調面などによる影響が大きく、訪問看護事業者が意図的にコントールすることが難しいものとなっています。また、売上を増やしたいと思っても、実際に利用者の方を紹介いただき訪問を開始するまでには、周知活動→依頼をいただく→担当者会議や契約を行う→初回訪問を開始するというステップを踏む必要があり、時間を要するためすぐに訪問を増やすということもし難い事業の特性があります。。

訪問看護の事業特性を踏まえ、収支管理は2~3か月の数値変動を予測してマネジメントすることが重要

 このような「売上は様々な要因で上下しやすいものの、経費は固定費で変わらない」という事業特性から考えられる収益構造の特徴を考慮すると、訪問看護事業の経営数値管理はでは先々の売上変動を予想しつつ周知活動や利用者の受入などを行うことが非常に重要になります。具体的には、先ほどのご依頼をいただき訪問を開始するまでのステップの時間軸を考えると、2~3か月先の売上変動を見越して周知活動や新規受入の判断を行うことと良いでしょう。
また、経費(固定費)は後々減らすことが難しいため、事業が安定し余裕ができるまでは最小限にとどめておくことが非常に重要です。

訪問看護事業における損益分岐点の考え方

赤字から黒字へ転換する際の訪問看護の売上を把握しておこう!

 上記の通り、売上と経費のバランスを把握する時に理解しておくべき考え方が、「損益分岐点」です。簡単にいうと、「赤字から黒字に変わるのは、売上がいくらの時か?」ということです。説明をシンプルにするために、訪問看護事業には人件費と家賃しか経費がかからないとします。1名30万円の人件費の看護師が5名おり、事務所の賃料は20万円でした。すると、経費は170万円です。この際、赤字から黒字に変わるポイントは、売上が170万円の時です。このポイント(利益が0円になる)を、損益分岐点といいます。ここから何が分かるかというと、単に考え方を逆転させただけですが、損益分岐点を下回ると、赤字であるということです。つまり、先ほどのケースの場合は170万円の売上を上げないと、赤字が積みあがっていくことになり、経営をするときは、損益分岐点をちゃんと超えているか、また超えて行けるかが重要になってきます。実際には人件費や賃料以外の経費も必要になるため、毎月どの程度の経費が必要となるかを計算し、損益分岐に必要な売上をしっかり把握しましょう。

ちなみに、厳密な損益分岐点の計算では、「変動費」という売上の増減によって比例的に変動する経費考慮して計算します。しかし、訪問看護における経費はそのほとんどが固定費で変動費がわずかであるため、そのわずかな変動費のために複雑な計算式を用いるより、暗算でどの程度の売上が必要かを把握できるシンプルな考え方を行うことをお勧めしています。

損益分岐点到達に必要な訪問看護の利用者数も把握しよう。

損益分岐点に到達する売上を把握出来たら、次はより現場実践と連動するために何名程度の利用者さんを受け入れる必要があるかも考えてみましょう。単に売上170万円と言ってもメンバーもイメージが湧きづらいですし、「売上のため」という意識が強くなりすぎてしまうことがあるため、まず事業として継続するために必要な損益分岐点に到達するためには、どの程度の利用者さんにケアを届ける必要があるのか?という視点でメンバーも理解できる指標にすることが大事です。

実際には過去の実績などから計算するとより精度の高い目標値が出せますが、本コラムでは、訪問単価10.000円、1名あたりの月間訪問回数8回、と仮定をおいて計算します。

1,700,000円 / (10,000円x8回)=21.25名

上記の仮定で計算すると、利用者数が22名になった時点で損益分岐点に到達するということが分かりました。利用者数に置き換えると、実際にその数値の達成に関する難易度がイメージしやすいかと思います。初めて訪問看護の事業計画を立てる時は、このように現場で理解しやすく、実際にマネジメントする受入利用者数などに置き換えて、地に足の着いた計画を立案しましょう。

訪問看護事業の立上げは慎重かつ計画的に!

今回は初めて訪問看護事業を立ち上げる方向けに、訪問看護の収支構造と損益分岐点の基本的な知識について解説しました。今回ご紹介した内容は必要な知識のごく一部に過ぎません。昨今、訪問看護事業所の立上げ数が増えている一方で、競争も激化し、年間廃業率は5.5%を超える高い数値となっています。そのため、訪問看護事業の立上げを行う際は、慎重かつ計画的に行いましょう。また数値管理以外にも人事・労務・営業・法務など、あらゆる側面での準備が必要となります。UPDATEでは、訪問看護マネジメントスクールの他に、訪問看護事業の立上げコンサルティングなども行っております。無料相談も行っておりますので、「訪問看護事業所を立ち上げたいけど右も左も分からない」という方はぜひ気軽にお問合せください。

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小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ株式会社にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職マネジメント人財を育成するためマネジメントスクールを運営中。