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訪問看護ステーション大規模化の経営メリットと陥りがちな罠【訪問看護マネジメントナレッジ05】

訪問看護ステーション大規模化の経営メリットと陥りがちな罠

訪問看護事業所の大規模化は、経営や日常業務の安定運営のために非常に重要なポイントです。しかし、実際に大規模化を目指していくと、「規模化どころか組織が悪化してしまった。」という事態に陥ることも少なくありません。そのため、本記事では訪問看護ステーションが大規模化を目指すことのメリットと陥りがちな罠について解説し、大規模化を目指すにあたってのマネジメント・ナレッジをご紹介いたします。

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訪問看護ステーションを大規模化するメリット

まずは訪問看護ステーションで大規模化を行うメリットをご紹介します。本記事では、マネジメント面における観点に絞って解説していきます。

組織マネジメント観点での訪問看護ステーション大規模化のメリット

大規模化による認知度やケアマネ接点の増加による依頼の安定

まず1つ目は「認知度やケアマネ接点の増加による依頼の安定」です。訪問看護の経営や事業所安定化の重要なポイントは、スタッフ数に応じた訪問キャパシティー(どの程度訪問に回ることができるか?)に対して、多すぎず・少なすぎない数の訪問件数や時間を確保することが重要です。近年、訪問看護事業所数も右肩上がりで増えていく中で、今後受入数を維持しづらくなっていく可能性もあります。そのため、事業所の規模を大きくして地域の中での認知度を高めていくこと、また実際に多くの利用者様の受け入れることによってケアマネージャー等関係者との接点を多く持つことでリピートでの依頼を増やしていけるメリットがあります。

オンコールの分散による従業員の働きやすい環境構築

2つ目のメリットは「オンコールの分散」です。近年、訪問看護は専門性が高く、24時間365日の訪問看護体制を構築していくことが求められています。一方で、少人数での24時間365日対応を行う場合、スタッフ1名あたりのオンコール対応日数が多くなることによって採用や人財定着に支障が生じます。そのため、規模化によってスタッフ数を増えることで、スタッフ1名当たりのオンコールや緊急出動の頻度を下げることができます。

入退職による稼働率(業務負荷・収支)の変動幅の減少

3つ目のメリットは、「スタッフ入退職時の稼働率のブレを減らせる」ことです。先ほど、キャパシティーに対する訪問件数や時間の多すぎても少なすぎてもダメという内容を記載しましたが、どうしても入退職によりキャパシティーが大きく変動することがあります。その際、小規模な事業所ほど1名あたりの入退職の影響が大きいため、事業所を規模化することで多少の入退職で稼働率が大きくブレない状況を創ることで事業所の運営や経営安定につながります。

利用者増減による稼働率(業務負荷・収支)の変動幅の減少

4つ目のメリットは、3つ目と対照的に「利用者の増減による稼働率のブレを減らせること」です。原理はスタッフの入退職と同様です。利用者の増減は、ご入院やお看取り、軽快など訪問看護ステーションだけではコントロールができない要素が多く含まれており、頻回な訪問を行っている利用者様の契約が終了するケースでは、急激に訪問件数や時間が減少することになります。そのため、規模化を図ることで、利用者の増減による稼働率のブレが減り、事業所運営や経営の安定につながります。

教育や組織構築に対する投資予算の確保

最後のメリットは、「スタッフへの教育や組織構築に対する投資予算が確保できる」ことです。訪問看護サービスは、スタッフそのものがサービスの質を左右する特性があり、採用・育成・教育・評価などの人事プロセスの強化が非常に重要になります。しかし、小規模な事業所では投資対効果の観点で効率が悪く、積極的な投資が行いづらい現状にあります。そのため、規模化によって利益を積み上げることと、施策に対する効果の対象者を多くすることで、教育・組織構築に関する投資を行いやすくなるメリットがあります。

訪問看護ステーション大規模化の罠

訪問看護ステーションの大規模化には、上記でご紹介したもの以外にも現場実践に関するメリットも多々あり、多くの事業所が「一定規模まで大きくしたい」と組織の規模化を目指されます。しかし、実際にはスタッフ7~8名程度の規模から「規模を大きくするどころか、むしろ組織が悪くなった。」というケースも少なくありません。

訪問看護ステーションの大規模化を目指す際に陥りがちな症状

訪問看護ステーション大規模化で見られる症状

訪問看護の大規模化を目指す上では、上記のスライドのような内容の悩みが非常に多く発生します。人数が増えてくることに合わせて、今まで当たり前だった理念やルールの浸透が難しくなり、それぞれが想い想いに動くようになってしまう。現場サイド・経営サイドというような言葉で括り、やたら敵対構造を創りたがる。スタッフ同士の合う合わない問題で訪問スケジュール調整などの業務に支障が生じる。業務負荷が高いメンバーがいる一方で、極力訪問看護以外の仕事をしないようにするスタッフが出始める。このような悩みが絶えず、発生するようになります。

そのまま放置すると、組織がどんどん悪化していく。

このような症状が発生した際、それぞれが個別に発生しているように見え対処法が分からないことと、通常業務の忙しさも相まって、多く事業所が特段対処や組織マネジメントの工夫をせずに放置してしまいます。その結果、次のスライドのように、表面的な症状から組織の構造として非常に根深い問題へと悪化しまうことがあります。

訪問看護ステーション大規模化の症状を放置した際の組織の悪化

規模化の過程で「訪問看護マネジメントの負のサイクル」に陥ることが原因

このような構造的な問題まで悪化してしまう原因は、実は管理者や経営者のマネジメント思考が原因となっています。詳細は別の記事にてご紹介しますが、管理者や経営者のマネジメントでの対応が負のサイクルを生みだし、まとまりがなく、マネジメント難易度が高い組織へとなってしってしまいます。

訪問看護マネジメントで陥りがちな負のサイクル

特に、訪問看護ステーションの大規模化における負のサイクルの原因としては、「事業と組織の主従関係が逆転すること」、「コミュニケーションラインを意識したマネジメントが出来ていないこと」が代表的な傾向として挙げられます。

訪問看護マネジメントの負のサイクルと脱却の要点!

訪問看護ステーションの大規模化を目指す時に抑えるべき2つのコト

訪問看護の大規模化におけるマネジメントの要諦はいくつかありますが、本記事では組織マネジメントにおける2つの考え方をご紹介します。

事業と組織の主従関係を明確に意識する

まず、1つ目が「事業と組織の主従関係を明確にすること」です。事業を拡大する際に、人数が増えたり、価値観の違う人材が集まることによって様々な症状や不協和が生じます。その際、より現場に近い管理者ほど「組織を維持する」ことへの意識が強くなり、事業方針にマッチしているか否かを問わず全ての不満を解消しようとしたり、中には望ましくない言動に対して「退職されては困るから・・・」と適切なフィードバックを行わないなどの行動を取ってしまうことがあります。

現場に近いが故に「組織を維持しなければならない」という責任感から、「組織維持」を優先したくなるのは当然の感情ですが、事業として対象者に価値を出すことや事業の方針より組織を維持することを目的としたマネジメントを行うと、事業に向き合っている従業員ほど離脱していくという現象が生じます。そのため、いかなる時も、「事業が主・組織が従」という目的意識のもと、マネジメントにおける様々な意思決定や対応を行っていくことが負のサイクルに陥る罠を回避する上で重要です。

その他、「訪問看護の管理者・経営者が陥りがちな8つの課題」が組織の負のサイクルの原因になっていることもありますので、ぜひ8つの課題のに関する記事もご欄いただき自己採点してみるとよいです。

コミュニケーションラインを意識した人材配置

2つ目の、規模拡大時に抑えるべきマネジメントの要点は、「コミュニケーションラインを意識する」ことです。組織について考える時、どうしても頭数で規模を測ってしまいますが、大事なのはスタッフ間におけるコミュニケーションラインの数を意識することです。

例えば、3人の組織におけるコミュニケーションラインは3本です。スタッフが4名の場合はどうでしょうか。答えは6本になります。ではもう少し組織が大きくなって8名の組織では何本でしょうか。答えは・・・、なんと28本です。

8名程度の組織と言われても頭数でみると、みんなでテーブルを囲んでMTGを行うにも大きな支障はなく、それぞれの名前はもちろん、人柄や家族の状況などを覚えることには何ら難しさはありません。そのため、頭数だけで判断するとそんなに大所帯な印象はないのですが、実はコミュニケーションラインは激増していて、色んなコミュニケーションラインで認識のずれが合ったり、合う合わないがあったりしてしまいます。

このことに気が付かないまま管理者が人で事業所の管理をしようとしてしまうことが多く、結果としてマネジメントが行き届かず、組織の不協和が多発してしまうという事象に陥ります。そのため、正式な役職をつけないまでも、組織が5~8名に1名程度のイメージで、管理者とメンバーのハブになるような人材を育て、その役割を担ってもらうように配置していくことが非常に重要です。

まとめ|訪問看護ステーションの大規模化では組織マネジメント力が重要

本記事では、訪問看護の経営や事業所安定のための大規模化について、そのメリットと陥りやすい罠、そして代表的な2つのマネジメントの要点について解説してきました。着実に規模を大きくし、また組織を健全に機能させていくためには、今回ご紹介したような「組織マネジメント」に関する実践的な知識や判断の引き出しを持っておくことが重要です。記事ではごく一部の要点をご紹介していますが、UPDATE訪問看護マネジメントスクールでは「組織マネジメント基礎」などの講座を開講し、医療職のマネジメント実践力を高める取り組みをしていますので、ぜひマネジメント能力を高めていきたい方は、スクール詳細もご覧ください。

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小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ株式会社にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職マネジメント人財を育成するためマネジメントスクールを運営中。