訪問看護管理者なら知っておくべきマネジメントの「負のサイクル」とは?
訪問看護ステーションや医療現場の管理者として日々奮闘する中で、
「現場の次から次へと問題が発生してキリがない」
「一つ解決したと思ったら、もっと厄介な問題が発生した」
「尽きない課題に、疲れてしまった」
などの思いを抱えている管理者は少なくないでしょう。
実はこれ、マネジメントの「負のサイクル」に陥っているせいかもしれません。
負のサイクルに一度入ると、どれだけ努力しても組織の状態が悪化する恐れがあります。そして最終的には、管理者のバーンアウトにつながる場合もあるのです。
本記事では、そんな結末を未然に防ぐための「マネジメントの負のサイクル」について解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
訪問看護管理者が「負のサイクル」に陥る背景

管理者が負のサイクルに入りやすい理由には、共通する構造的な背景があります。ここでは特に多い2つの背景を整理します。
マネジメントを学ぶ機会が乏しい
臨床現場でのスキルに関する学習機会はあるものの、医療者がマネジメントを体系的に学ぶ機会は少ないのが現状です。
これまでの病院組織では、師長や部長といった役職に就くのはごく一部の人間に限られていました。
しかし、訪問看護ステーションが地域に増え続ける現在、管理者のポストは急増しています。
その結果、マネジメントのトレーニングを受けていない状態で、ある日突然「管理者」という重責を担うことになるケースが後を絶ちません。
マネジメントが経験則頼みになりやすい
ロールモデルが少ない訪問看護では、管理者が経験則に頼らざるを得ません。
しかし、属人的な判断が続くと、組織運営に再現性がなくなってしまいます。
例えば採用面接では、「なんとなく良さそう」という直感で人を選び、後からミスマッチに気づくケースがよくあります。
評価や育成の基準も明確でないため、スタッフの成長や組織の発展にばらつきが生じます。
経験頼みの運営は、一見うまく回っているようでも、長期的には課題を生みやすい運営形式なのです。
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訪問看護運営で「負のサイクル」に陥る3つの原因

負のサイクルは、突然訪れるわけではありません。小さな“ズレ”が積み重なり、気が付けば大きな問題へと育っていきます。ここでは、3つの原因についてみていきましょう。
原因1.理念と運営のバランス崩壊
組織運営に追われるあまり、「本来の理念」より「いま現場が回るか」が優先されてしまうと、組織の軸が揺らぎます。
理念より目の前の対応が優先されると、判断基準が曖昧になり、組織の方向性が不明瞭になります。
特に訪問看護のように日々の課題が多い現場では、意図せずこの状態に陥りやすいのです。
理念と運営のバランスを欠いた瞬間、負のサイクルへ足を踏み入れるリスクが高まります。
原因2.人手不足で歪む管理者の判断
訪問看護は労働集約型の事業であり、スタッフ1人の退職が大きなダメージになります。
そのため「辞められたら困る」という恐怖が管理者の判断を歪めていきます。
本来は指導すべき行動を見逃したり、問題を先延ばしにしてしまったりするのは、珍しいことではありません。
「今は注意できない」「辞められたら現場が回らない」と妥協を積み重ねるうちに、組織の基準が曖昧になってしまいます。
人手不足に飲まれた判断は、組織の質を大きく損ないます。
原因3.基準の低下と組織の変質
一度基準を下げると、その影響は瞬く間に組織全体に広がります。
「理念に合わないが即戦力だから」という理由で採用したり、問題行動を黙認したりする妥協は、短期的には現場を守る選択に見えます。
しかし長期的には、組織の文化やサービス品質を蝕む“致命的な判断”となります。
基準を下げた瞬間から、組織の変質が始まるのです。
訪問看護の「負のサイクル」の全体像とは?

負のサイクルの最も深刻な部分は、「優秀なスタッフが辞め、基準の低い人材だけが残る」という現象です。
静かに始まる「負のサイクル」の前兆
理念に共感し、高い志を持って働くスタッフほど、組織の変化に敏感です。
基準の低下や価値観のぶれを感じ取ると、静かに離れていきます。
「なぜあの人の行動が許されるのか」
「この職場は、変わってしまった」
と感じた瞬間、彼らは見切りをつけます。
そして当たり障りのない理由で去っていくため、管理者は深刻さに気づきにくいのです。
理念に共感していたスタッフの離脱は、組織の未来を奪う大きな損失です。
スタッフの離脱を放置するとどうなるか?
理念に共感していた層が抜け、組織に残るのは「条件さえ良ければいい」「楽に働きたい」と考える層や、他に行き場のないスタッフばかりになります。
組織の基準は下がり続け、もはや当初目指していた理想のケアを提供することは不可能になります。
そして、低下した基準に合わせて新たなスタッフが入ってくるため、組織の質はさらに低下していきます。
この悪循環が一度完成してしまうと、そこから抜け出すのは困難です。
管理者は常に人の入れ替わりに悩み、質の低下したサービスのクレーム対応に追われることになります。
訪問看護の負のサイクルを断つ3つの考え方

負のサイクルを断ち切るためには、次の3つの考え方を意識することが大切です。
考え方1.理念を軸にした判断を徹底する
まずは「事業(理念)」を軸に判断を行う姿勢が必要です。理念がぶれると、どれだけ努力しても組織は整いません。
理念に沿った行動基準を明確にし、一貫した姿勢でスタッフに伝える。 短期的な負担よりも、長期的な組織の安定を優先することがポイントです。
理念を守る姿勢は、優秀なスタッフの信頼を取り戻します。
考え方2.基準を下げないための決断力を持つ
組織の質を守るためには、基準に合わないスタッフに対して、改善か卒業かを検討する勇気が必要です。
対話を重ねても改善が見られない場合は、別の選択肢を勧めることも管理者の重要な役割です。一時的な人手不足よりも、長期的な組織の健全性を優先することが結果的に組織を救います。
これは簡単ではありませんが、負のサイクルを断ち切るうえで避けて通れない判断です。
考え方3.管理者が抱え込まない体制をつくる
負のサイクルの最終的な被害者は、管理者自身です。
孤独になりやすい立場だからこそ、外部の支援や相談相手を確保することが重要です。
・メンターやコーチの存在
・同じ立場同士のコミュニティ
・心身を守るための仕組みづくり
自分を守ることは、組織を守ることにも直結します。

訪問看護の「負のサイクル」を理解するのが第一歩

訪問看護の管理者は、気づかないうちに理念や基準が揺らぎ、組織全体に影響が広がってしまうことがあります。しかし、負のサイクルの構造を理解できれば、早い段階で適切な軌道修正が可能です。
そのために、まず押さえておきたいポイントがあります。
- マネジメントを学ぶ姿勢を持つ:経験則だけに頼らず、原理原則を学ぶ。
- 理念と運営のバランスを保つ:短期的な都合で基準を下げない。
- 妥協のリスクを理解する:基準の低下は優秀なスタッフの離職につながる。
- 孤独に抱え込まない:相談できる場を持ち、バーンアウトを防ぐ。
特に、訪問看護の管理者は、日々の判断や責任の重さから、どうしても一人で抱え込みやすい傾向があります。
しかし、組織に関わる課題の多くは“個人の努力だけでは解決できない”構造的な問題であり、一人では状況が改善しにくいのが現実です。
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