訪問看護におけるマネジメントの役割とは?組織力を高める方法を解説!
訪問看護ステーションを運営するうえで、マネジメントがうまくいかないと悩むマネージャーは少なくありません。目先の業務をこなし、日々積み重なる課題に対処しているうちに、疲弊してしまう方も多いでしょう。マネジメントについて知識を深めることは、組織力を高め事業を推進していくための第一歩です。この記事では、訪問看護ステーションにおけるマネジメントの定義・役割・組織の目標設定のコツについて、現場の視点に寄り添って解説します。
目次
マネジメントの役割を明確にすることの重要性
組織力を高めるためには、マネジメントの定義・役割を理解し、組織全体で共通認識を持つことが重要です。ここでは、マネジメントの定義や役割についてみていきましょう。
マネジメントとは?
マネジメントと聞いて、どのようなことを思い浮かべるでしょうか?訪問スケジュールやシフトの調整・収支の管理・新規の受け入れ・患者さんの管理など、普段行っている目先の業務に意識が向いた方も多いのではないでしょうか。
マネジメントとは、ヒト・モノ・カネを上手に動かして、どのように成果を上げるか試行錯誤することです。また組織の目的・理念を達成するために、ヒト・モノ・カネをどう活用するか考え、行動していくことでもあります。
マネージャーの役割とは?
マネジメントを担当する管理者には、効果的・効率的にあらゆる資源を活用・管理し、組織の成果を最大化する役割があります。そのためには、管理者だけでなくメンバーも合わせた全員が、組織の共通目的を基準として、成果を最大化するために業務を行うことが重要です。
組織における共通の成果を基準にしないと、個人の好き嫌い・得手不得手・能力の範囲内での管理となってしまいます。その結果、組織目的にマッチしている人財が離脱してしまう事態が起こりかねません。よってマネージャーは、組織の目標を明確化し、メンバーと共有する必要があります。
マネジメントの役割が不明確なことによる弊害
マネジメントの役割が明確でない場合、マネジメント当事者にとって以下のような問題が生じる可能性があります。
- マネジメントのやりがいが見出せず、現場の方が楽しかったと感じてしまう
- 管理者として成長している実感がなく、いつまでも自信が持てない
- 目先の業務や問題に押しつぶされてしまう
これらの点から、マネージャーがマネジメントを苦痛に感じてしまうかもしれません。
また、マネージャーを育てている人の視点も考えてみましょう。マネジメント役割が不明確な場合、以下の問題点が考えられます。
- 管理業務をこなすだけの管理者しか育たない
- マネジメントを任せた人から潰れてしまう
これらの結果として、有望な人財が次々に離脱してしまうことが懸念されます。このような状況になると「医療職マネジメントの負のサイクル」に陥ってしまい、組織がどんどん悪くなっていきます。
そうならないためにも、マネジメントの役割を明確化し、組織全体で共通認識を持つことで、健全なマネジメント体制の構築につなげていきましょう。
マネジメントのスタートライン
マネジメントのスタートラインとしてやるべきことは以下の3点です。
- 「組織の成果」という共通目的を意識する
- 「組織の成果」につながっているか判断基準を設ける
- マネジメント思考をメンバー全員が持てるようにする
「組織の成果」という共通目的を意識する
「組織の成果」という共通目的を意識して、日々のマネジメント業務を何のために行っているのかを振り返ることが、マネジメントのスタートラインであるといえます。「組織の成果」というワードについては、堅苦しく感じる方もいるかもしれません。その場合は、「私たちのゴール」「チームのゴール」などと言い換えるのもよいでしょう。組織の雰囲気に合った「組織の成果」というキーワードを日々意識し、共通の言語にすることが重要です。
「組織の成果」につながっているか判断基準を設ける
また、「組織の成果」につながったのかという判断基準を設けることも重要です。この判断基準があることで、マネージャー自身が意思決定や対応の振り返りを行いやすくなります。判断基準に沿って自らの判断や対応を定期的に振り返ることで、目標に向かってどの程度進んでいるのか明らかになり、モチベーションを維持できるでしょう。また改善すべき点も明らかにできます。
マネジメント思考をメンバー全員が持てるようにする
マネージャーのみならず、メンバー全員がマネジメント思考を持つこともマネジメントの基礎として重要なポイントです。組織の全員が、「私たちの組織における意思決定として、良いか悪いか」を語れる組織は強いでしょう。メンバーの頃からマネジメント思考を身につけておけば、自身がマネジメントをする立場になった時にも役立ちます。
マネジメントの方向性を掴む
マネジメントの定義や役割についてみてきましたが、これらを頭に入れただけでは意味がありません。ただ覚えるだけでなく、自分の組織で置き換えることが大切です。
- 自分の組織での「成果・目指す姿・目標」とは?
- 自分の組織での「効果的・効率的な活用や管理の方向性」とは?
この2点を抑え、求められるマネジメントの方向性を掴みましょう。マネージャーの独りよがりな解釈にならないよう、必ずマネジメントチームで意見を擦り合わせることが重要です。
訪問看護ステーションの成果(ゴール)を明文化する
訪問看護ステーションの成果を明文化するには、組織におけるMVV&Pに加え、具体的な成果目標を考えることが重要です。
大指針としてのMVV&P
まず大指針として、組織におけるMVV&Pを自分たちに馴染みのある言葉で明確にしましょう。
- Mission 企業の使命
- Vision 目指す姿
- Value 企業の行動指針・価値観
- Purpose 社会にとっての存在価値
これらの文言は、多くの人に印象付けることを目的として、綺麗な言葉でコンパクトにまとめられる傾向にあります。そのため、抽象的でありきたりな理念になってしまうことも少なくありません。
コンパクトな文言の後に、ストーリー仕立てでより詳しい企業理念を説明することで、組織が提供する他にない価値観が明らかになります。また日々の実践の中で組織の理念について話す機会を設けることで、目指すべき姿が明確になり、一人ひとりの使命感が高まるでしょう。
組織で目指す具体的な成果目標
MVV&Pを明確にするだけでは抽象度が高くなりやすく、具体的な行動に結びつかないこともあります。そのため、事業所ごと、あるいはチームごとの目標など、具体的な行動に結びつきやすい目標を立てるようにしましょう。
ゴール設定のありがちな失敗
マネージャーがメンバーの意見を大事にするあまり、その場にいた人たちで無難なゴールを設定してしまい、組織の方向性がズレてしまうことがあります。
メンバーの意見を取り入れることは大切ですが、全員の意見の総和ではなく、最終的にはマネージャーチームが判断することが重要です。
私たちUPDATEでは、その他にもゴール設定にありがちな失敗とその対策について、UPDATE訪問看護マネジメントスクールにて解説しています。訪問看護マネジメントの経験者による、実践的な内容を体系的に学べるのが特徴なので、興味がある方はぜひ詳細をご覧ください。
訪問看護ステーションにおけるゴール設定のコツ
最後に、訪問看護ステーションにおけるゴール設定のコツについて解説します。成果・ゴール設定がズレてしまうと、その後の全てがズレてしまうことになりかねません。
適切なゴール設定のためのコツとして、意見を擦り合わせる際に以下の4つのポイントを抑えるとよいでしょう。
- 事業目的との整合性
- 客観的に測定可能
- 具体性
- 網羅性
それぞれについて詳しく解説します。
事業目的との整合性
事業目的である対象者への価値提供を軸にして、事業本来の目的との整合性を高める必要があります。よくある例として、「安心して働ける職場にする」というゴール設定をすることがありますが、これは成果達成のための手段です。手段とゴールを履き違えていないか注意し、事業目的に沿ったゴール設定になっているか確認しましょう。
客観的に測定可能
客観的に測定ができるゴール設定にすることも重要です。具体的な振り返りができるようにするため、抽象的なゴールではなく、客観的に測定可能なゴール設定を意識するとよいでしょう。
具体性
抽象度が高すぎるゴールだと、メンバーが具体的に何をしてよいかわからなくなってしまいます。組織の理念をそのまま掲げたゴールでは漠然なものになりやすいため、具体的なゴール設定を心がけることで施策に落とし込みやすくなるでしょう。ゴールが具体的であれば、成果の測定もしやすくなります。
網羅性
最後に紹介するのは網羅性です。目標が多すぎても覚えられず、実践に落とし込めないリスクがあるとはいえ、少なすぎても網羅し切れないでしょう。ある程度の網羅性があるかを確認することもゴール設定のコツです。
まとめ:より良いマネジメントで組織力を向上
この記事では、訪問看護ステーションにおけるマネジメントの役割について解説しました。
組織のパフォーマンスを上げるためには、マネジメントの役割を明確化し、組織の目指す成果をチーム全体で共有することが重要です。
実際に自分たちに馴染む言葉で「組織の成果」について話し合い、あるべき姿を意識して業務に臨めば、組織力はもっと高まるでしょう。
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