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訪問看護の管理者が抱える悩みと身に着けるべき6つのスキル【訪問看護マネジメントナレッジ03】

訪問看護ステーションの管理者・経営者が抱く悩み事と身に着けるべきスキル

訪問看護の管理者や経営者になるとどんな困りごとに直面するのか。
本記事では、これから管理者や経営者になる方にも、自ら管理や経営を実践している方にも、よくある課題を整理し要点をまとめることで、スキル習得や改善につなげていただけるよう解説していきます。

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一番の悩み事は「何が課題が分からないこと」

訪問看護ステーションの管理者・経営者の悩み事

これまで多くの訪問看護管理者・経営者の方にお話を伺っていて、皆様が最も課題に感じていたことは「自分のマネジメント上における課題が何なのかが分からない」ということ。管理者や経営者になると、事業や組織を運営していくために大きなことから細かいことまであらゆる課題に対処していくことが求められます。もちろん、カテゴリーごとに順番に課題が発生すれば分かりやすいですが、実際には様々な分野について大なり小なりのたくさんの課題が五月雨に発生する現状に発生したものから順次対応せざるを得ないというのが実情です。そのため、「マネジメントの全体像がつかめない!」という悩みを持つ方が多くいらっしゃいます。この状態に慣れてしまうと、いつしか「課題の発生待ち」になり全ての対応が後手になってしまう状況に陥るので、まずは訪問看護管理者や経営者がどのような課題で困っていることが多いかを理解するところから始めましょう。

訪問看護管理者・経営者の悩み

訪問看護の管理者や経営者40名以上にインタビュー行った際に、悩み事としてよく聞かれたものについて紹介していきたいと思います。現場の悩みを上げれば尽きないと思いますが、本記事では特にマネジメントに関するものについて、経営管理に関するものから順に紹介していきます。

①事業計画に関する悩み

そもそも医療職の方は、訪問看護を起業したり管理者になるまで事業計画を考えたり見たりすることがない方がほとんどです。そのため、多くの方から聞かれた悩みは「事業計画をどのように創ったらいいかが分からない」「年に1回創るもののちゃんと運用できておらず、どんぶり勘定な経営をしている」という声が多く聞かれました。なんとなく事業所は運営できているものの感覚的な管理になってしまっており、漠然とした不安がいつも付きまとっているような状況への悩みが多く聞かれました。

②資金繰りや収支に関する悩み

1つ目の悩みに関連して、2つ目は会社や事業所のお金に関する悩みがよく聞かれました。中には資金繰りの管理方法が分からず、「危うく資金が尽き従業員の給与を払えなくなりそうになった。」「成長に向けて規模を大きくしすぎて一気に赤字に転落して倒産しかけた」という声もありました。事業の収支と資金繰りの管理方法が分からないことで、安定した運営ができないことの悩みの声が多くありました。

③採用や定着に関する悩み

3つ目は訪問看護ステーション数が年々増える中求人を公開してもエントリーがなかなか来ないこと、それにより一定スタッフへの負担が増え退職の連鎖に陥ったという声が上げられました。令和4年度では全国で2,000事業所近くが新設される中で採用戦略をどのように立てたらよいかが分からず、苦戦しているとの声が多くありました。

④管理者のマネジメント能力の悩み

4つ目はマネージャー自身の能力に関する悩みで、「管理者になったもののマネジメントの全体像が分からないまま対応をせざるを得ない」「人財のマネジメントが上手くいかず、経営陣とメンバーの乖離が生じてしまった」などの声が聞かれました。訪問看護は良くも悪くも”人ありき”なサービスのため、ピープルマネジメントを中心としたマネジメントに関する苦戦の声や経験の浅さに関する悩み事が聞かれました。また中にはスタッフのフォローに追われるがあまり、管理者自信が仕事へのやりがいを見失っているという方もいらっしゃいました。

⑤人材育成・オンボーディングの悩み

最後は人材育成に関する悩み事です。スタッフの育成や定着以外にも、管理者の後任が育たないことも声として聞かれました。スタッフに関しては「どのような教育体制を構築すべきなのかが分からない。」「チーム全体で人材育成に関する認識をすり合わせられない」などの声が聞かれました。管理職の育成では、前任の管理者自身が「マネジメントを上手く言語化できず、上手く育成ができない。」「体系的かつ実践的に学べる研修がない。」という悩みの声があり、人が育たないことで事業が成長しないという課題感を持たれていました。

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悩み事の6つの原因

訪問看護ステーションの管理者・経営者の悩み事6つの原因

上記をはじめその他にも多様な悩みの声がある中で、それぞれの原因を考えていくと大きく6つの悩みの原因があることが分かりましたので、この章では6つの原因についてご紹介していきます。

①事業特性の理解が浅い

まずは訪問看護の事業特性への理解が浅いことです。どの事業においてもビジネスモデルの特徴からどのようなマネジメントを行うべきなのかを考えて進めていくべきものですが、臨床経験はあるからと事業特性の理解が浅いまま経営や管理業務をはじめてしまうため苦戦を強いられます。特に医療職の方はビジネス事態への肌感が一般職の方より少ないため、訪問看護というシンプルな事業でも躓いてしまうことがあります。

②財務・数値管理の理解・スキル不足

2つ目は、主にお金や数値管理に関する理解やスキル不足です。病院などでは主に病床稼働率などの経営指標を追っていると思いますが、この指標ですら日々意識しているのは師長であったり、病院によっては部長レベルでないと責任をもって数値を管理していないというケースもあります。日常的にお金や経営に関わる指標の管理をしていないので、スキル不足も相まって悩みの原因となっています。

③営業・広報などの理解・スキル不足

3つ目は営業や広報の理解・スキル不足です。病院などの医療機関だと自然と患者さんが集まってきますが、訪問看護では自ら地域に顔を売って訪問看護の依頼を貰える環境を創ることが必要です。事業所数も増えている中、挨拶にいけばすぐに紹介してもらえるわけではないので営業力がないことで立上げ初期にすぐに倒産してしまうケースも耳にします。また、採用などについても事業所の魅力をアピールをして求職者を集めていく必要がありますが、病院のように人事部を単独で持てるほどの規模の事業所も少ないため、広報のスキル不足などにより事業が発展しない原因となっています。

④マネジメント役割の理解不足

4つ目はマネジメント役割の理解不足です。現場管理の延長線上で経営者や管理者になられる方が多いと思いますが、経営や組織を率いていくことは現場管理の延長とは別の視点やスキルが求められます。誰しも対処は経験が浅い状態からスタートしますが、医療職は近くにロールモデルとなる人材が少なく、また現場よりのマネジメント研修以外の学びの場が少ないため事業が上手く発展しない大きな原因となってます。

⑤人的マネジメントの理解・スキル不足

5つ目は4つ目と関係したピープルマネジメントの理解やスキル不足です。マネジメント能力としての側面と、人の上に立つためのリーダーシップの側面があると思います。こちらも近くにマネジメント能力の高いロールモデルがいないケースもあり、ピープルマネジメントをしていくべきなのかが分からない中での実践が経営者や管理者の悩みになっています。

⑥人材育成の理解・スキル不足

最後は人材育成に関する理解・スキル不足です。これは病院などにおいても大きな課題を持つ組織が多いかと思いますが、訪問看護でも同様です。また、訪問看護の場合は事業所規模が小さいため理解やスキル不足の影響が大きく、人を育てるのこと事業所のスタンスや雰囲気に影響したり、新人もフォロー体制も含めた環境が整っていないことにすぐ辞めてしまうケースなどもあると思います。また、管理者の育成においても研修やフォローの体制がないことが上手く実践できない大きな原因となっています。

訪問看護の管理や経営の課題を克服するために

本記事では、訪問看護管理者や経営者へのインタビューから、実践者がどのような悩みを持ち、またそれがどのような原因から起きているのかを解説してきました。特に原因については、裏を返せば6つの原因を克服すればそれに関連する悩みが解消、もしくはなくならないとしても程度が軽減します。訪問看護の経営や管理を行う方・これから行っていく方は、ぜひ6つの原因を克服することを目指していきましょう。
克服に向けて、①自らの実践をやりっぱなしにせず言語化して振返る、②経営者・管理者同士のコミュニティーなどでの情報交換、③体系的に学べるマネジメント研修参加、④訪問看護の経営・管理のコーチをつけることなどがおすすめです。訪問看護事業協会や看護協会などでもいくつか行っているものがあり、株式会社UPDATEでも『訪問看護マネジメントスクール』、『マネジメント・メンター』、『組織構築支援』、『企業内研修』などのサービスを行っています。まずは自分に合うものを探してみるとよいでしょう。
6つの原因を克服して、良いチーム・良い事業をみなで創っていきましょう!

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小瀨文彰プロフィール写真(株式会社UPDATE 代表取締役)
UPDATE 小瀨 文彰
株式会社UPDATE 代表取締役(看護師・保健師・MBA) ケアプロ株式会社にて新卒訪問看護師としてキャリアスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の他、薬局や訪問看護運営するスタートアップ企業で40拠点・年商65億規模の経営を行い上場企業へのグループインを実現。現在は医療職マネジメント人財を育成するためマネジメントスクールを運営中。