訪問看護指示書ルールを徹底解説!様式と交付時の注意点、よくある返礼もご紹介します。

訪問看護を行ううえで欠かせない書類の一つが「訪問看護指示書」です。医療保険と介護保険の両制度にかかわるため、管理者や経営者にとって正確な理解と適切な運用が極めて重要となります。
指示書が不備だと返戻リスクが高まるだけでなく、運営全体に悪影響が及びかねません。本記事では、訪問看護指示書の主要な様式から精神科特有のルール、交付フローや返戻事例などを体系的に解説します。

目次
訪問看護指示書の主な様式と特徴

訪問看護指示書には、複数の様式が存在し、それぞれの適用場面や内容が異なります。管理者や経営者が正確に把握しておくことで、スタッフへの周知や医師への依頼もスムーズに進むでしょう。ここでは、一般的な訪問看護指示書をはじめ、特別訪問看護指示書や在宅患者訪問点滴注射指示書の特徴を整理します。
通常の訪問看護指示書
通常の訪問看護指示書は、医療保険・介護保険を問わず在宅ケアで使われる必須の書類です。利用者の病状やADL、看護上の留意点などを網羅し、担当医が必要と判断する内容を明確に示します。これを基に訪問看護計画が立てられ、サービス提供が円滑に進むように調整されます。
特別訪問看護指示書
特別訪問看護指示書は、急性増悪などにより短期間で集中的なケアが求められる場合に医療保険で発行される文書です。
原則として指示期間は14日以内、月1回限りの交付ですが、気管カニューレ装着や深部褥瘡など特例時には月2回まで認められます。期間中は1日複数回や週4日以上の訪問が可能となり、基本の訪問看護指示書と合わせて使うことで精度の高い在宅ケアを実現します。
関連記事:特別訪問看護指示書とは?発行条件などの基礎知識・注意点を徹底解説
在宅患者訪問点滴注射指示書
在宅患者訪問点滴注射指示書は、点滴注射を週3日以上実施する利用者向けの指示書で、医療保険・介護保険のいずれにも対応します。指示期間は最長7日間とされ、継続が必要な場合は再度の交付を受ける仕組みです。
通常の訪問看護指示書とは別立てですが、書式そのものは共通となります。点滴の安全な管理と迅速な対応を行ううえで欠かせない書類であり、適切な点滴管理が実施されることで、利用者の負担軽減や容体の安定につながる大切な指示書と言えます。
精神科訪問看護指示書のルール
精神科に特化した訪問看護の場合、通常の指示書と異なる記載項目や運用ルールが設定されています。これは、精神面の状態把握や服薬管理などが中心となる特性を反映しているからです。ここでは、精神科訪問看護指示書の概要や特別指示書との違い、注意点などを解説します。
精神科訪問看護指示書の概要
精神科訪問看護指示書は、主に精神疾患の利用者様に対する在宅ケアを想定した書類です。内容としては、服薬管理や生活リズムの調整、心理面の観察項目が重点的に記載され、通常の訪問看護と異なる視点が求められます。医師が利用者様の精神状態を踏まえて訪問看護に期待する支援内容を細かく盛り込み、スタッフはその指示を基にケアプランを策定します。
精神科特別訪問看護指示書との違い
精神科特別訪問看護指示書は、精神疾患による緊急事態や症状の急激な変化に対応するための特別な指示書です。一般の精神科訪問看護指示書と比べて、突発的な行動変化や強い不安症状などへの対処が強化される形で発行されます。指示期間は短めに設定される場合が多く、短期間に集中して訪問回数を増やすなど、柔軟な対応が認められます。
主な注意点と記載項目
精神科訪問看護指示書において注意すべき点は、まず傷病名の扱いとリスク評価の具体性です。医師が指示書に明示する疾患名や症状の程度を正しく読み取り、観察・介入すべきポイントを見落とさないようにする必要があります。さらに、医療的ケアに加え、利用者様の心理面でのサポートが指示される場合も少なくありません。
そのため、経過観察や相談対応の頻度をどう設定するかが重要となり、スタッフ間で情報を共有する仕組みを構築すると効果的です。
また、指示期間や更新時期については一般の訪問看護指示書より短周期になりやすい傾向があり、こまめなチェックと再交付手続きが欠かせません。これらの点を踏まえて適切な記載を行い、運用上の抜け漏れを防ぐことで、精神科訪問看護の質を維持しやすくなります。
関連記事:精神科訪問看護は儲かる?精神科特化での運営メリットや仕事内容を解説
訪問看護指示書の交付フロー

訪問看護指示書の交付には、医療機関やステーションの事務手続きが関わります。特に書類の不備や依頼漏れが生じると、サービス提供が遅れたり返戻のリスクが高まったりします。以下では、医師への依頼方法から必要書類の準備、交付後の保管ルールまでを押さえます。
医師への依頼方法
指示書の交付を円滑に進めるためには、医師へのアプローチが重要です。まずは口頭や文書で訪問看護が必要な理由を簡潔にまとめ、依頼意図を明確に伝えます。併せて、利用者様の生活環境や具体的な支援ニーズも共有すると、医師が適切な指示内容を作成しやすくなります。
医師によっては、実際にステーションスタッフと打ち合わせを行い、どのような医療的ケアを中心に行うかを事前にすり合わせるケースもあります。
管理者や経営者としては、医師との連携スケジュールを事前に調整し、提出期限や改訂時期をしっかり伝えておくことが大切です。こうしたコミュニケーションを徹底することで、交付の遅延や内容の不備が発生しにくくなります。
必要書類の準備と提出手順
指示書交付を円滑にするためには、ステーション側で必要な書類を整え、適切な提出手順を踏むことが大切です。一般的には、訪問看護計画書や利用者様の基本情報、過去の診療記録があると医師が状況を把握しやすくなります。これらを事前に用意し、依頼状とともに医師に提出することで、指示書作成までの時間を短縮できます。
書式は厚生労働省の様式に準じたものが求められるため、更新や改定があった場合には即座に対応する体制を整えておきましょう。また、提出するタイミングも重要で、指示期間が切れる前に依頼を行い、継続的な在宅ケアが途切れないよう配慮します。こうした準備が交付フローをスムーズにし、サービス品質の安定にも寄与します。
交付後の確認・保管ルール
医師から訪問看護指示書が交付されたあとは、ステーションでの確認作業と保管管理が必須となります。まずは、傷病名や指示期間、医師の捺印や署名が正しく記載されているかを点検し、不備があれば速やかに修正依頼を行いましょう。また、交付日や有効期間も漏れなくチェックして、必要な更新手続きのスケジュールを把握しておくことが大切です。
保管については、法定保存期間に従って原本を適切に保管し、閲覧や監査時に取り出しやすい状態を維持します。電子化された環境でも、原本の紛失や改ざん防止を徹底するルールが求められるため、セキュリティ管理には十分な配慮が必要です。こうした管理体制が指示書の信頼性を高め、万が一のトラブル時にも素早く対応できる基盤となります。
指示書交付時に確認すべき項目
指示書が交付されても、記載内容に不備や不明点があると、現場や請求処理に支障が生じます。ここでは、特に確認が漏れやすいポイントである指示期間・傷病名コード、指示事項の内容、捺印や日付の整合性などを解説します。
指示期間と傷病名コード
訪問看護指示書において、指示期間の設定と傷病名コードの正確性は非常に重要です。指示期間が曖昧だったり、実際のケアと整合しない期間で記載されたりすると、保険請求の際に返戻や減算につながるリスクが高まります。傷病名コードもまた、医師の診断内容を正しく反映していない場合は、監査などで不備を指摘されかねません。
ステーション側は、医師から受け取った書類を丹念にチェックし、何らかの不一致を見つけた場合は速やかに問い合わせる必要があります。また、利用者様の状態が変化して新たな傷病名を追加する際には、改めて医師に指示書を更新してもらう流れを確立しておくことが望ましいでしょう。
リハビリ・留意事項・指示事項の内容
指示書には、医師が必要と判断したリハビリ内容や留意事項、具体的な医療的ケアが明記されます。これらの記載に曖昧さが残ると、現場スタッフがどの程度まで行ってよいのか判断に迷う場合があります。特にリハビリの種類や手技、頻度などが不確定だと、サービス提供の質に影響が出るリスクが高まります。
留意事項には、感染対策や緊急時の対応方法が含まれるケースがあるため、スタッフ間で正確に共有する必要があります。また、医師の指示する内容が利用者様の生活状況に合わないと思われる場合は、ただちに医師と相談し、指示書の再交付や補足説明を受ける手配を行うことが重要です。これにより、トラブルを未然に防ぎ、サービスの連続性を確保できます。
依頼先・捺印・日付の妥当性
指示書上には、医師の署名・捺印と交付日、さらに依頼先である訪問看護ステーションの名称などが正確に記載されている必要があります。ここで記載内容が一文字でも異なると、保険者が事実関係を疑い、返戻や追加確認の要請が行われるケースもあります。
特に医師の捺印や署名が不鮮明、または日付の記載が欠落していると書類の有効性自体が疑問視されるリスクが高まります。
管理者が交付された指示書をチェックする際は、こうした細部に注意を払い、万が一の誤記があれば早急に修正を求める体制を整えることが大切です。書類のミスは信頼低下だけでなく、訪問看護の実施スケジュールにも影響するため、適切な確認が欠かせません。
訪問看護指示書を交付してもらえない場合
在宅療養のニーズが明らかでも、さまざまな事情で医師から指示書が交付されないことがあります。その際、利用者様やステーション双方に影響が及ぶ恐れがあるため、早期に対応策を検討する必要があります。ここでは、医師とのコミュニケーションや主治医変更などの選択肢を考察します。
医師との連絡方法と依頼の仕方
指示書を交付してもらえない原因としては、医師が訪問看護の必要性を理解していない、あるいは書類作成の手間や時間的な制約を負担に感じているなどが考えられます。管理者としては、利用者様の生活状況やリスク、ケアの必要性を具体的に示し、書類作成がもたらすメリットを説明することが大切です。
電話や面談を通じて、医師の疑問点や懸念を解消することができれば、交付につながる可能性が高まります。依頼のタイミングも重要で、診察日やカンファレンスの機会などを事前に把握し、医師のスケジュールに配慮して手続きを進めると、スムーズなやりとりが期待できます。
主治医変更など臨機応変な対処案
現行の主治医が訪問看護への理解を示さず、再三の依頼にも応じてもらえない場合、利用者様と相談のうえで主治医の変更を検討する選択肢もあります。ただし、その際には医師やケアマネージャー、ヘルパーなど多職種での連携が複雑になるケースもあるため、慎重な判断が求められます。
利用者様の病歴や治療方針、相性なども考慮し、新たに主治医となる医師が在宅支援に積極的であるかを確認することが大切です。また、変更後の手続きやカルテの引き継ぎなど、書類面だけでなく実務面でも負担が増える可能性があります。そうした点を総合的に評価し、利用者様に最適な医療体制を検討する姿勢が不可欠です。
文書交付が困難なケースによる対応
医療機関側の都合や利用者様が遠方での診療を続けているなど、物理的・環境的な理由で文書交付が難しい事態も想定されます。こういったケースでは、まず医師とのオンライン面談やFAX、郵送など、代替手段を活用した書類授受を模索するとよいでしょう。
加えて、医師の診療方針が在宅支援と一致しているかを改めて確認し、急ぎの場合は特別訪問看護指示書の発行を検討する場面も出てきます。
管理者がこうした方法を柔軟に調整することで、利用者様への訪問看護が滞らないようにすることが重要です。いずれにしても、コミュニケーション手段を多角的にとり、必要な手続きをスピーディに実施する体制を整えることが大切です。
訪問看護指示書ルールによる返戻事例
書類管理が不十分だと、保険請求時に返戻を受けてしまうリスクがあります。返戻が発生すると再請求の手間が増えるだけでなく、ステーションの収益安定にも影響するため、管理者は防止策に注力する必要があります。以下では、具体的な返戻のケースを取り上げ、それぞれの対処法を考えます。
記載不備による返戻ケース
もっとも多いのが、傷病名や指示期間、医師の署名・捺印などの不備による返戻です。これらは比較的初歩的なミスに分類されますが、チェック体制が甘いとたびたび起こりやすくなります。例えば、指示期間に空白があったり、日付が二重に訂正されて読めなくなっていたりすると、支払側が内容の整合性を疑って返戻を行うケースが多いです。
返戻を防ぐには、書類を受け取った時点でダブルチェックを行い、不備が見つかれば速やかに医師へ再確認を依頼することが効果的です。また、スタッフへの教育やマニュアル作成などで、基本的な書類管理のレベルを高めることが重要です。
保険種別の誤りに関する返戻ケース
訪問看護指示書は医療保険と介護保険の両制度で用いられるため、保険適用の種別を誤って記載した場合、返戻対象となります。具体的には、要介護認定を受けている利用者様で医療保険の指示書が発行されていたり、逆に医療保険が該当する状態にもかかわらず介護保険を用いていたりすると、監査で不備を指摘されるリスクが高まります。
管理者は、利用者様の認定状況や主治医の判断をしっかりと把握し、どの保険種別で請求を行うのが適切かを常に確認する必要があります。誤りを防ぐためには、利用者様の被保険者証や受給者証を更新ごとにチェックし、スタッフ同士で最新情報を共有する仕組みを整えることが効果的です。
指示期間超過や重複交付によるケース
指示書の有効期間を過ぎても訪問看護を継続したり、同じ利用者様に対して重複して指示書を発行してしまうと、請求時に返戻される可能性が高まります。特に重複交付は、特別訪問看護指示書と通常の指示書を同期間に発行してしまうなどのケースが該当します。
こうしたトラブルは、管理者が指示書の残り期間や発行状況を把握していないことが原因で起こりやすいです。システムや台帳で一元管理し、更新日が近づいた際には自動アラートを出す仕組みを導入するなど、予防策を講じるとよいでしょう。
定期的にスタッフへルールの再周知を行い、指示期間が切れる前に必ず再交付依頼を出す習慣を徹底すれば、返戻リスクの低減が期待できます。
書類管理と更新のタイミング

訪問看護指示書は、一度発行されたら終わりではなく、利用者様の状態や保険制度の変化に応じて更新や再交付が必要になります。ここでは、保管期間や更新時期、書類監査に備えるためのポイントなどを整理します。
指示書の保存期間と保管方法
訪問看護指示書は、法令で定められた期間保管する義務があり、一般的には5年間の保存が求められます。管理者は原本が毀損や紛失しないよう、施錠可能なキャビネットや専用のファイルで保管し、取り出しやすい仕組みを整えることが重要です。
電子化を進める場合は、改ざん防止策とバックアップ体制を確保し、緊急時にも即座にアクセスできる環境をつくりましょう。
また、交付日や内容別に整理し、監査や第三者のチェックがあったときに短時間で提示できるようにすると、業務効率の面でもメリットがあります。書類管理を徹底することで、返戻リスクの軽減や職員間の情報共有を円滑に進められます。
定期的な更新・再交付手続き
訪問看護指示書は、利用者様の状態や医師の診断内容によって頻繁に更新が必要になることがあります。例えば、病状の変化やリハビリ計画の改訂などがあれば、指示書もそれに合わせて再交付を受ける必要があります。
管理者としては、定期的にスタッフから利用者様の状態を報告してもらい、指示書の更新が必要かどうかを判断するフローを構築することが大切です。指示期間が終了する前に医師へ依頼することで、訪問看護が途切れるリスクを抑えられます。
書類の改訂時には旧版との内容差を把握し、スタッフ間で共有することで、不必要な混乱を防ぎつつ、サービスの継続性を高められます。
書類監査に備えるポイント
訪問看護指示書は、定期的または突発的に行われる行政監査や保険者監査の対象となることがあります。管理者は監査で指摘を受けないよう、常日頃から書類の整合性や保存状態をチェックするルールを確立しておくと安心です。具体的には、電子カルテや紙資料の内容との相違がないか、医師の捺印や書式の要件を満たしているかなどを定期的に確認します。
また、指示期間の管理や更新履歴の記録を残しておくと、監査時に内容の変遷を説明しやすくなります。もし監査で不備を見つけられた場合も、即座に訂正や再発行に対応できる体制を築いておくことで、ステーションの信用を守り、請求業務への影響を最小限にとどめられます。
参考文献:「訪問看護療養費の取扱いの理解のために」|厚生労働省
まとめ
訪問看護指示書は、在宅ケアの根拠となる重要書類であり、医師・ステーション・利用者様を結ぶ要の役割を果たします。正しい様式の把握と適切な運用が、スムーズなサービス提供と請求トラブルの回避を後押しします。
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