訪問看護の初回加算とは?【2024年改定対応】要点と算定のポイント

訪問看護の運営を行う管理者や経営者にとって、加算の正確な理解は事業運営上の重要ポイントです。特に「初回加算」は新規利用者様の訪問看護計画書作成や初回訪問に関連して評価されるため、2024年介護報酬改定の変更点を踏まえた把握が必要になります。今回の記事では、初回加算の基本的な仕組みから対象者、算定時の留意点まで詳しくご紹介いたします。

目次
訪問看護の初回加算とは

初回加算とは、新たに訪問看護を利用する利用者様や、一定期間訪問看護の利用がなかった方に対して評価される加算です。2024年介護報酬改定では、よりきめ細かな区分として初回加算(Ⅰ)・(Ⅱ)が新設されました。管理者や経営者にとっては、正しい理解に基づき加算を請求し、訪問看護計画書や初回訪問の質を高めることが重要です。
初回加算の位置づけと目的
初回加算は、訪問看護サービスを開始する最初のタイミングでの初回アセスメントや新規の訪問看護計画書の作成を評価する加算です。退院直後の利用者様は身体面・精神面ともに不安定な場合が多く、ご家族とのコミュニケーションもまだ十分に構築されていないことがしばしばあります。
そこで、訪問の初期にに必要な医療的ケアの確認や生活支援の方向性を早期に固めることで、状態の悪化や生活上のトラブルを防ぎやすくなるのが大きな目的です。さらに、訪問看護ステーション側としても、初動段階で丁寧なケア計画を立案することで、その後のケア全体の質向上が期待されます。
介護保険特有の加算である
訪問看護は医療保険でのサービス提供も可能ですが、初回加算は介護保険での訪問看護を利用する際に適用される評価です。
医師やケアマネージャー、ヘルパーなど多職種での連携を重視する介護保険下の訪問看護では、利用者様の日常生活全般を幅広く支援する必要があります。
初回の状態把握やアセスメント、看護計画策定をしっかりとを行うことで、在宅生活の質を高めるうえで大切な基盤を築けるでしょう。
2024年度介護報酬改定での新設区分
2024年度の改定では、初回加算の評価体系が見直され、初回加算(Ⅰ)と初回加算(Ⅱ)の2区分が新たに設けられました。これは退院当日の緊急性や早期の介入ニーズが高まっている現状に対応するための措置です。
特に、退院当日に訪問を行うケースでは、家屋環境の確認や利用者様の状態把握を迅速に行わないと、在宅での療養が安定しにくいリスクがあります。
このような現場のニーズを反映し、より細かい区分で加算を算定できるようになったのが今回の改定の大きな特色でしょう。新設区分を理解し、自事業所のサービスモデルに合った算定を検討することが求められます。
初回加算の対象者と算定タイミング
初回加算を上手に活かすためには、どのような利用者様が対象になるのか、そして実際に算定できるタイミングはいつなのかを正確に理解する必要があります。ここでは、具体的な対象者の例と加算算定の基本的なタイミング、そして複数事業所の併用が起こりうる場面での扱いについて解説します。
対象者の具体例
初回加算が適用される主な対象者は、訪問看護を新規に利用することになった方や、病院から退院して在宅での療養を始める方などです。特に、退院直後は利用者様とご家族が戸惑いや不安を感じやすいため、訪問看護の役割が非常に重要になります。
たとえば、急性期の治療を終えて自宅に戻るケースでは、生活習慣や服薬管理、食事など幅広い領域でサポートが必要となることが多いでしょう。
また、認知症の傾向がある方や、身体的な制約が大きい方なども、初回訪問のタイミングでしっかり状態を把握することが肝心です。そうした利用者様に対し、初回加算を算定することで、早期介入に伴う追加的な手間や調整が正当に評価されます。
算定タイミングの基本的な考え方
初回加算を請求するうえで重要なのは、訪問看護を開始したタイミングに対してどれだけ早期に必要なケアを組み立てられているかという点です。多くの場合、初回訪問日を基準に算定が行われますが、退院日当日など時間的に余裕がないケースほど加算の意義は高まります。
たとえば、退院日当日の訪問が可能な体制を整えておけば、急性期医療を終えたばかりの利用者様の状況をリアルタイムで把握し、その後のケア計画をより適切に設計できます。初回加算があることで、ステーション側も早期対応のメリットを再認識し、積極的な体制づくりを進めやすくなるでしょう。
複数事業所利用時の取扱い
複数の訪問看護ステーションを同時期に利用する場合でも、暦月にて過去2月間にその事業所で訪問看護を受けていなければ、それぞれのステーションで初回加算を算定できます。介護予防訪問看護から要介護認定への移行時など、同一運営法人内での利用履歴があっても、要件を満たす場合があります。
また、同一月に複数事業所を利用するケースでも、一定の条件を満たせば各ステーションで算定が認められるでしょう。一方で、暦月ベースの2月間に医療保険での訪問看護を受けた実績がある場合には、初回加算は適用されません。
訪問スケジュールの把握と連絡調整を意識し、算定の漏れを予防につなげましょう。複数ステーションを活用する場面は増加しているため、管理者は利用者様の状況を把握し、適切な運用体制を検討することが重要です。
参照:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)平成24年3月16日 問36|厚生労働省
初回加算の要件と具体的な区分

初回加算には、2024年度の改定により「初回加算(Ⅰ)」と「初回加算(Ⅱ)」の2種類が設けられています。どちらも初回訪問時に重要な加算ですが、対象となる状況や単位数、算定の要件に違いがあるため注意が必要です。
初回加算(Ⅰ)の概要
初回加算(Ⅰ)は、病院や介護保険施設を退院・退所した当日に初回の訪問看護を行った場合に適用される加算です。2024年度の介護報酬改定による設定単位は1ヵ月あたり350単位とされ、改定前よりも高めに定められています。算定対象となるのは、新たに作成した訪問看護計画書がある利用者様で、退院当日に看護師が初回の訪問を実施したケースです。
退院後すぐの段階で看護師による訪問を行うことで、利用者様とご家族とのコミュニケーションや安全確保を早期に支援できる点が評価されています。ただし、同じ月に初回加算(Ⅱ)を併用して算定することはできず、訪問のタイミングや職員の職種に関するルールを十分に確認する必要があります。
退院当日のスムーズな受け入れ体制を構築することで、利用者様の安心につながり、地域での在宅ケアをより円滑に進められることが期待されます。
初回加算(Ⅱ)の概要
初回加算(Ⅱ)は、退院または退所した翌日以降に初回の訪問看護を実施した際に算定できる区分です。改定後の1ヵ月あたりの単位数は300単位とされ、加算(Ⅰ)との大きな違いは、看護師に限定せず初回訪問が行われる点にあります。
新規の利用者様に対し、新たに訪問看護計画書を作成したうえで訪問すれば算定対象となるため、退院直後にタイミングを逃した場合でも支援の強化が可能です。
「(Ⅰ)と(Ⅱ)」の併用不可やその他の留意点
初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は同一利用者様に対して同時に算定することはできません。また、退院時共同指導加算との併用が不可となるケースもあるため、利用者様が退院直後に多職種との共同指導を受けている場合は注意が必要です。
管理者としては、入院中からの情報収集や医師やケアマネージャー、ヘルパーなど多職種での連携を行い、どの加算を適用すべきか事前に整理しておくことでスムーズに請求できるようになるでしょう。
初回加算算定の留意点と実務上の注意
初回加算の算定にあたっては、書類や記録の整合性、スタッフ間の情報共有など、多方面の管理が求められます。管理者や経営者は、算定漏れや誤った請求を防ぐだけでなく、適切な対応で利用者様が安心して訪問看護を受けられるようにする必要があります。
必要書類の準備と請求手続き
初回加算を請求するには、訪問看護計画書の適切な作成と保存、利用者様の状態を反映した初回訪問の記録などが欠かせません。
特に初回加算(Ⅰ)を算定する際は、退院直後の状態に関する記録や医師からの指示内容がきちんと明示されているかを確認することが大切です。書類不備があると後日指摘や返戻の対象になるため、経営者は事務担当者や看護職員と定期的なチェック体制を整えることをおすすめします。
初回訪問時のスタッフ体制
初回加算を算定する条件として、初回訪問を看護職員が行う必要がある場合があります。管理者はスタッフのシフトを調整し、利用者様の状態に合わせて看護職員が訪問できる体制を整えましょう。
利用者様が退院当日に不安定な状態である場合は、看護職員が血圧計、体温計、サチュレーションモニターなどを用いて適切にアセスメントし、必要に応じた医療的ケアや多職種との連携を実施することが求められます。
運営全体への影響とスタッフ教育
初回加算の正確な運用は、訪問看護ステーション全体の運営にも影響します。新規利用者様への対応を手厚くすることで満足度の向上に繋がり、その後の継続的なケア提供や事業評価にも好影響を与えます。
また、算定要件の理解や手続きフローの把握は管理者だけでなく、現場スタッフにも共有が必要です。定期的な研修やミーティングを通じて、全員が同じ認識を持てるように準備を進めましょう。
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初回加算の厚生労働省Q&A
Q.一つの訪問看護事業所の利用者が、新たに別の訪問看護事業所の利用を開始した場合に、別の訪問看護事業所において初回加算を算定できるのか。
A.算定可能である。
引用:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)平成24年3月16日 問36|厚生労働省
Q.同一月に、2ヵ所の訪問看護事業所を新たに利用する場合、それぞれの訪問看護事業所で初回加算を算定できるのか。
A.算定できる。
引用:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)平成24年3月16日 問37|厚生労働省
Q.介護予防訪問看護を利用していた者が、要介護認定の更新等にともない一体的に運営している訪問看護事業所からサービス提供を受ける場合は、過去2月以内に介護予防訪問看護の利用がある場合でも初回加算は算定可能か
A.算定できる。訪問介護の初回加算と同様の取扱いであるため、平成21年Q&A(vol.1)問33を参考にされたい。
引用:平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)平成24年3月16日 問38|厚生労働省
Q.初回加算を算定する場合を具体的に示されたい。
A.初回加算は過去二月に当該指定訪問介護事業所から指定訪問介護の提供を受けていない場合に算定されるが、この場合の「二月」とは歴月(月の初日から月の末日まで)によるものとする。したがって、例えば、4月15日に利用者に指定訪問介護を行った場合、初回加算が算定できるのは、同年の2月1日以降に当該事業所から指定訪問介護の提供を受けていない場合となる。また、次の点にも留意すること。
①初回加算は同一月内で複数の事業所が算定することも可能であること。
②一体的に運営している指定介護予防訪問介護事業所の利用実績は問わないこと(介護予防訪問介護費の算定時においても同様である。)。
引用:平成21年4月改定関係Q&A(Vol.1)について)問33|WAMNET
2024年度報酬改定の初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の導入背景

2024年度の介護報酬改定では、退院当日の訪問ニーズへの対応や、在宅への移行が円滑に進むことがより重視されました。その結果として初回加算(Ⅰ)の導入や初回加算(Ⅱ)の見直しが行われ、訪問看護の提供体制を一層強化することが期待されています。
退院当日の訪問強化とケアの質向上
退院当日に利用者様の状態が大きく変化することが多いため、在宅での受け入れ体制を早期に整備する必要があります。初回加算(Ⅰ)は、こうした退院直後の課題に対して適切に対応するステーションを評価する目的で設けられました。
管理者としては、退院情報の入手から訪問スケジュールの調整まで、流れをスムーズにする体制づくりに注力することが求められます。
早期介入を促す政策的狙い
医療的ケアや在宅療養を早期から支援し、入院や再入院を防ぐという考え方があります。初回加算(Ⅰ)および(Ⅱ)の再編成は、よりリスクの高い状態の利用者様を手厚く支援するためのインセンティブとして位置付けられます。
特に利用者様が退院して自宅での生活に移行するタイミングは、管理者が現場スタッフと緊密に連携して質の高い訪問看護を提供するチャンスでもあるでしょう。
多職種連携の推進
在宅での生活を支えるには、看護師だけでなく医師やケアマネージャー、ヘルパーなど多職種での連携が欠かせません。初回訪問で収集した情報は、リハビリスタッフや管理者、さらには地域包括支援センターなどと共有し、同じ目標に向かってケアを進めるうえで重要な土台となります。
特に、退院当日の訪問や早期訪問は、急性期の医療情報を速やかに多職種で共有し合う絶好の機会でもあります。これにより、利用者様が自宅に戻ってからのケアプランが統合的かつスピーディーに組み上がりやすくなるメリットがあります。今回の初回加算強化によって、多職種連携を推進する要素がより一層強化されている点に注目しましょう。
関連記事:訪問看護の多職種連携の必要性とは?看護師の役割や課題を解説!
まとめ
訪問看護における初回加算は、新規利用や長期の空白後にサービスを再開する際、質の高いケア体制を早期に整えるために大切な仕組みといえます。2024年度改定による加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の新設により、より柔軟な算定が可能になりました。正確な知識を持ち、計画的に対応することで、利用者様にも安心感を提供できます。
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