【セミナーレポート】『訪問看護の管理者・リーダーの抜擢方法 ~適切な人材配置のために~ 』_UPDATEマネジメントスクール・スキルアップセミナー
2024年9月17日、UPDATE訪問看護マネジメントスクール 公開スキルアップセミナー『訪問看護の管理者・リーダーの抜擢方法 ~適切な人材配置のために~』を開催致しました。当日は活発な質疑など非常に盛り上がり、ご参加いただきました皆様には誠にありがとうございました。本記事では、セミナー内容や様子についてお届けいたします。
目次
セミナー概要
テーマ
『訪問看護の管理者・リーダーの抜擢方法 ~適切な人材配置のために~』
開催日時
2024年9月17日(火)20:00~21:00
企画の背景
組織が大きくなっていくと、新たなポジションとしてリーダーを配置したり、後任の管理者を配置する必要性が出てきます。この際、マネジメント職に配置する人選を誤ってしまうことで、管理職自身が潰れてしまったり、逆に組織の風土が急激に変化し周りのスタッフが退職してしまうことが良く起こります。このような事態をきっかけに、年単位で組織の立て直しに追われるという経験がある方も少なくないと思います。そこで、今回は人事領域のプロである黒澤さんをゲストにお招きし、中核人財となる管理者やリーダーの抜擢のポイントについて、みなで学んでいきます。
ゲスト
株式会社ITSUDATSU
代表取締役 黒澤 怜 氏
早稲田大学人間科学部卒。デル株式会社(現:デル・テクノロジーズ株式会社)、株式会社ビズリーチ(現:ビジョナル株式会社)、コーチングファーム取締役を経て、株式会社ITSUDATSUを創業。
「ITSUDATSU(非直線的な現象)を再現性の高い世の中にする」という大義の下、要人材を起点とした独自の組織活性方法で累計300以上のプロジェクトを推進。現在、複数社の取締役CHRO(非常勤)を歴任。
モデレータ
株式会社UPDATE
代表取締役 小瀨 文彰
ケアプロに第一号新卒訪問看護師として参画。訪問看護の現場・管理業務・人材育成プログラム開発を行った後、薬局や訪看を行うスタートアップ企業の役員として、40拠点・従業員200名・年商65億規模の事業責任者として経営に従事し上場企業へグループイン。現在は『医療者が持つ力を最大限発揮できる社会へ』というビジョンのもと、医療職の経営・マネジメントスクールを運営中。
ゲストからの話題提供
数多くの会社のCHROを歴任してきて見えた組織活性のアプローチ
黒澤氏:よく企業は人事施策を展開しようとする時に人事制度や評価制度から着手しがちですが、実はこういった仕組みから入ってもあまり上手く行かないことが多いです。これまで数多くの手法を実施し、中でも効果的で現在ITSUDATSUでも実施しているユニークな取り組みとしては、組織全体ではなく個人にアプローチする方法です。組織を活性化するためには、まず個人が活性する必要があります。また五月雨にすべての人にやるのではなく、周囲に影響力を及ぼす人財を見つけ、アプローチしていくことが大切です。私たちはそのような人財を「要(かなめ)人材」と呼んでいます。
どのように要人財を見極めていくか。
黒澤氏:私たちが提供している要人財見極めのサービスでは、8つの視点を見極めを行っているのですが、今日はその代表的な2つをご紹介します。1つは『地に足が付いているか』。現実的な課題に対して逃げずに向き合えるか、という視点です。生物の原理原則として何かプレッシャーを感じた時に防衛機制が働きます。この時に起きる行動は大きく二つで、逃げるか、攻撃するかです。日々仕事をしていく中で、ちょっとしたフィードバックをしたり、本人がミスを起こしてしまうことがあると思いますが、この時に自己保身に走らずちゃんと自分の課題に向き合える人材か否かを見極めていくことが大切です。
黒澤氏:もう一つの視点は、『素直に人と向き合うか』です。具体的には、忖度せずに他者とオープンに向き合えるかです。訪問看護では、利用者さんとは向き合えるけど、対組織になると斜に構えてしまう方などもいるので、現場だけでなく仲間に対してもオープンに向き合えるかということも非常に重要です。
黒澤氏:このような要人材を見つけていく方法ですが、解釈などは全て置いておいて、従業員のありのままを「観察」することが重要です。例えば、オフィスにごみが落ちていたらさりげなく拾うとか、挨拶を大きい声でしっかりできるとか、とても当たり前なことですが、要人財は日々の日常の当たり前に向き合っていて、丁寧な生き方をしている方が多いです。そのため、今週は「○○さんを観察しよう」と順版に丁寧にその人の日々の動きを見ていくことが重要です。
アプローチする順番とは?
黒澤氏:組織を活性化するために個人にアプローチすることが大事ですが、この時に「自立している人」から順番に活性化していくことが重要です。自律については、スライドのような3つのステップがありますが、要人材はこの中でいうとSTEP2と3に該当します。このような人材から順番に活性化していく事が重要です。また、自律度合いには「自律(精神面)」と「自立(能力面)」の2つの軸があります。能力面での「自立」については、その人の状況に応じて、上司の関り方をティーチング、コーチング、リクエスト、と変えていくことが重要です。
自律と自立の9象限で組織の人材を見極め、育てる。
黒澤氏:そのため、実際に組織の中で要人財を探す際は、スライドのような自律x自立の9象限で考えるとよいです。
黒澤氏:また良くあるマネジメントのミスとしては、メンバーの状態合わせたマネジメントができておらず、本来自律度合いが高い方に対しティーチング的な関わりをしてしまうケースがあります。この場合は、自律度が高いにも関わらず日々マイクロマネジメントをされてしまうので、要人財が活性化しないことがあります。逆に、本来ティーチング的な関わりが必要な方にコーチング的に関わってしまうケースもよくあります。この場合は、基礎がない状態でコーティング的に引き出すような関りをしても上手く育てることができません。
トークセッション
質疑応答①
参加者さん①:9象限の中で、社会的自律をしているものの訪問看護は初めてで能力が少ない場合はどのように関わったらいいでしょうか?
黒澤氏:そのような方は社会的に自律していて学習意欲や吸収する姿勢が高いので、自ずと成長していきますし、他社と比べて成長するスピードが速いと思います。なので、最初の基礎は丁寧に教えつつ、成長が見えた段階では早めにコーチング的な関わりに切り替えていくことが大切です。また、そのような人は周囲に非常に影響を及ぼすので、相性がよさそうな方を近くにおいてあげると、近くに置いた人も影響されて成長していきます。
質疑応答②
小瀨:組織崩壊した時など、全体の雰囲気が悪いと「要人材がいない」という声が上がってきそうですが、そういった場合はどうしたらいいですか?
黒澤氏:実際によく経営者さんから「うちにはそのような人はいない」と言われることがあるんですが、絶対います。組織は必ず2:6:2の法則で分布しているので埋もれているはずです。見つけ方としては、組織が上手く行ってない時に「社長、こういうことをしていったほうがイイと思います」とやや食い気味にいって来る人がいると思うんですが、そういった方は要人材の可能性が高いです。上司からすると、そういった人って面倒にみえて評価が低かったりするので埋もれてしまいがちです。
小瀨:確かに、組織が上手く行っていない時に、そういった方と向き合うのって上司も結構プレッシャー感じてたりしますし、そこから目を背けてしまいがちなケースってありますね。でも、実はくすぶっている要人材だったりするし、それを見過ごしているとそういう人も離れて行ってしまうリスクもありそうですね。
質疑応答③
小瀨:採用の時の要人材の見極めってどうしたらいいですか?最近オンライン面談が主流なので、リアルな様子とかは見づらいなと思いまして。
黒澤氏:私が良くやるのは、ある程度面談がほぐれたタイミングで、「ちょっと話が変わるんですが、○○さんの生きがいってなんですか?」と急に深い質問を投げかけることです。この時、どんな内容が返ってくるかは全く関係なくて、そのような深い問いに対する反応を見ています。例えば上手く言葉にできなくてもしっかり考えて必死に答えようとする人、さらっと表面的な回答をする人、面接用に用意した教科書的な回答をする人など、様々な反応があります。その反応から、不意な深い質問を受けた時に、どう向きあう人なのかを見えるようにしています。
小瀨:今日の内容にもあった「プレッシャーを受けた時の向き合い方」にも関係しそうですね。面接なんで、良く見せたいという心情にかられる中で、急に応えづらい不意な質問が来た時にしっかり自分自身に向き合って応えようとするか否かが、その人の根本的な姿勢の評価につながりそうですね。
質疑応答④
参加者さん②:最近、今日のお話であった要人材のような方を育てていて、求める役割や行動を明文化しようと文章にまとめて伝えたのですが、「重荷すぎる」と逆にプレッシャーになってしまいました。このようなケースについてどう考えたらいいでしょうか。
黒澤氏:セルフイメージが低いケースですね。このようなケースは訪問看護では非常に多くありますね。役割や行動をマニュアルにまとめて伝えていくのは続けて大丈夫で、それを日々丁寧にやるとイイです。ポイントとしては、日々出来ていることなどが合ったら、その瞬間、即座に出来ていることをフィードバックしてあげてください。日々のコミュニケーションの中で、丁寧にフィードバックしていくとその人も自信を持っていくことができると思います。
小瀨:MVVを現場に浸透させようとする時も、メンバーからみて重荷すぎたり、胸焼けしてしまうケースがあると思いますが、今回のご質問のケースはそれに似てますよね。まずはまとめてしっかり伝えることが大事だけど、瞬間的にトップから伝えるだけだと皆自分ごと化できなかったり、重荷に感じてしまう。でも、皆が普段やってることの延長線のことを話しているだけなので、トップダウンで伝えることに加え、日々の行動がMVVに繋がっていることも意味づけていく、上から・下からの両方でアプローチするのが大事。今回の相談も、その両方を意識していくと良さそうですね。
質疑応答⑤
小瀨:さいごに、管理職やリーダーを配置する時に、配置した人財によって組織崩壊にいたるケースもあると思います。経営者や管理職として、次のマネジメント人材を配置する際に「こういう人は要注意」というアンチパターンを教えてもらえますか。
黒澤氏:結構現場でのパフォーマンスが高い方が管理職になることが多いですが、実は管理職としては不向きというケースはよくありますね。例えば、色んな人に対していい顔をしているケース、また上司と部下で見せる顔が違うケース、こういった方は組織をかき乱すことがあるので、要注意かなと思います。
小瀨:確かに、スキルはあるけどそういった傾向がある人って、下からも上からもフィードバックしづらくなったりしがちですが、その状態を放置していくと組織が完全に壊れるというケースも少なくないので、配置の際は見極めが重要ですね。今日は、非常に深いテーマでお話をいただきまして、ありがとうございました!
さいごに:今後のセミナー予定について
セミナーレポートをご覧いただき、ありがとうございました。UPDATE訪問看護マネジメントスクールでは、組織マネジメントを中心とした医療職向けの講座を定期的に開講しています。また今回のようなスクール生以外も参加できる公開スキルアップセミナーも実施していますので、訪問看護におけるマネジメント力高めたい、同じ課題に向き合う仲間とつながりたい、という方は、ぜひお気軽にご参加ください。UPDATE公式LINEのお友達登録を頂きますと、定期的に新しい企画のセミナーについてご案内を受け取ることができますので、ぜひご登録いただければ幸いです。