訪問看護で新人はなぜ辞める?離職を防ぐための「3つの失敗」と対策を解説!
「せっかく採用した新人が、すぐに辞めてしまった…」
「新人と既存のスタッフの間で価値観が合わず、職場の雰囲気が悪くなっている…」
医療や介護の現場で、上記の悩みを抱えている管理者の方やリーダーは少なくないでしょう。一人を採用し、育成するには、多大な時間とコスト、そして精神的なエネルギーがかかります。
早期離職が続いてしまうと、現場の疲弊は深刻化し、組織全体のパフォーマンス低下にもつながりかねません。
実は、新人職員が定着しない背景には、受け入れ側の対応に共通した「失敗」が隠れていることがあります。良かれと思った対応が、かえって新人の不安を煽り、孤立させているのかもしれません。
この記事では、多くの訪問看護事業所が陥りがちな新人対応の3つの大きな失敗について紹介します。壁を乗り越え、新人を温かくチームの一員として迎え入れるための方法も、具体的に解説します。

目次
訪問看護教育の失敗1:業務オリエンテーションから始める

新人職員の入職初日。
「まずは早く仕事に慣れてもらおう」と、勤怠の打刻方法、電子カルテの使い方、業務マニュアルの説明など、具体的な業務内容のオリエンテーションから始めてはいないでしょうか。
実はこれこそが、私たちが最初に陥りがちな大きな失敗なのです。
訪問看護の新人は「不安」でいっぱい
新しい職場での初日、新人の心の中は期待よりも大きな不安で占められています。
- 「この職場でうまくやっていけるだろうか?」
- 「同僚と良い関係を築けるだろうか?」
- 「自分はここで本当に役に立てるのだろうか?」
特に、病院から訪問看護ステーションへ転職してきた看護師のように、働く環境が大きく変わる場合はなおさらです。病院では当たり前だった検査データがすぐに見られない環境、紙やFAXでのやり取りの多さなど、これまでの常識が通用しない場面に次々と直面します。
このような心理的な負荷が高い状態で、いきなり細かい業務手順を説明されても、内容はほとんど頭に入ってきません。むしろ、「覚えることが多すぎる」「自分には無理かもしれない」と、不安を増大させ、パニックに陥らせてしまう原因にさえなります。
訪問看護業務初日に伝えるべきこと
初日にすべきなのは、「あなたを仲間として歓迎している」というメッセージを伝え、安心感を持ってもらうことです。
業務の進め方よりも先に、組織の理念やビジョン、大切にしている価値観を共有しましょう。
- 私たちは、どのような想いでこの事業を運営しているのか。
- 利用者さんや地域に対して、どのような価値を提供したいと考えているのか。
- チームとして、どのような働き方を大切にしているのか。
こうした組織の「根っこ」の部分を共有することで、新人は「自分はこのチームの一員になるんだ」という所属意識を持つことができます。そして、これから始まる仕事に対して、前向きな意味を見出すことができるのです。
初日の目標は、業務を一つでも多く覚えさせることではありません。まずは「この職場を選んでよかった」と心から思ってもらい、安心できる居場所を作ることが定着への第一歩です。

訪問看護教育の失敗2:価値観のズレを放置する

入職から数週間が経ち、新人も少しずつ業務に慣れてきた頃。ここで第二の失敗が起こりがちです。それは、既存の組織文化や仕事の進め方との「ズレ」を指摘せず、放置してしまうことです。
管理者や教育担当者は、「まだ入ったばかりだから、あまり細かく言うのは可哀想だ」「前職でのやり方もあるだろうから、まずは本人のやり方を尊重しよう」といった配慮から、フィードバックをためらってしまうことがあります。
しかし、この様子見が、後々大きな問題に発展する可能性があります。
遅れたフィードバックは「批判」に聞こえる
例えば、ケアマネジャーとの連携の仕方について、組織が大切にしているスタンスと新人のやり方にズレがあったとします。それを放置した結果、後日ケアマネジャーからクレームが入ってしまい、そこで初めて新人に注意する、というケースを考えてみましょう。
注意された新人は、どう感じるでしょうか?
きっと、「なぜ今まで何も言ってくれなかったんだろう?」「もっと早く教えてくれればよかったのに」と、不信感を抱くはずです。
良かれと思って見守っていたつもりが、本人にとっては「今まで黙認されていたのに、問題が起きた途端に責められた」という理不尽な批判に感じられてしまうのです。このような経験は、上司や組織への信頼を大きく損ないます。
「修正」ではなく「すり合わせ」を
重要なのは、ズレに気づいた初期段階で、タイムリーにフィードバックを行うことです。その際、一方的に「それは間違っている」と指摘しないようにしましょう。
「私たちの組織では、こういう理由で、このように進めることを大切にしているんです」と、背景にある価値観や理由を丁寧に説明しましょう。
これは「修正」ではなく、組織と個人の価値観の「すり合わせ」のプロセスです。
入職時のオリエンテーションで、「これから一緒に働く中で、私たちのやり方と違う部分が出てくるかもしれません。
またお互いの考えを共有しながら、一番良い方法を一緒に見つけていきましょうね」とあらかじめ伝えておくのも効果的です。そうすることで、フィードバックが「サポートの一環」として前向きに受け止められやすくなります。
訪問看護教育の失敗3:定着して当たり前と思い込む

3つ目の失敗は、訪問看護管理者が持つ「一度採用したのだから、定着するのは当たり前」という無意識の思い込みです。
特に、即戦力として期待される中途採用者に対して、この傾向は強くなります。「社会人経験も医療職としての経験も十分にあるのだから、すぐに慣れて活躍してくれるはずだ」と過度な期待をかけ、特別なフォローをしないまま放置してしまいがちです。
しかし、どれだけ経験が豊富な人材であっても、新しい環境、新しい人間関係、新しいルールに適応するには、大きな精神的エネルギーを消耗します。これまでの職場で発揮できていた価値が、新しい場所ですぐに発揮できるとは限りません。むしろ、今までのやり方が通用しないことへの戸惑いや、成果を出せない自分への焦りなど、新人ならではの悩みを抱えているものです。
「ねぎらい」の文化を創る
この思い込みをなくすために必要なのが、新人の頑張りを認め、ねぎらう文化です。
例えば、入職後半年といった節目に、「大変な時期をよく乗り越えてくれたね。ありがとう。これからも一緒に頑張ろう!」と、上司やチームメンバーから声をかけるだけでも、新人の心は大きく救われます。
私の以前の職場では、新卒入社の職員に対して入職半年記念のお祝いをしていました。すると、ある時、中途採用の看護師から「新卒だけずるい」という声が上がったのです。最初は「社会人経験もあるのに…」と思いましたが、よく考えてみれば、彼女もまた、新しい環境で必死に頑張ってきた「仲間」の一人でした。
定着は当たり前ではありません。不安や葛藤を乗り越え、チームの一員になろうと努力してくれている新人に対して、組織全体で感謝と敬意を示す姿勢が大切です。
その積み重ねが、個人の成長を促し、組織への信頼感を高めていくことにつながるでしょう。
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まとめ:訪問看護の新人を「仲間」として迎え入れる文化を

新人職員の早期離職を防ぎ、定着を促すために最も重要なことは、突き詰めれば「新人を単なる労働力ではなく、同じ船に乗る『仲間』として心から迎え入れる」という一点に尽きます。
- 業務より先に、理念や価値観を共有し、安心感を与える。
- ズレが生じたら放置せず、早期に「すり合わせ」を行う。
- 定着を当たり前と思わず、適応への努力を認め、ねぎらう。
これらの対応はすべて、「仲間」を大切に思う気持ちから生まれるものです。
作業を教えるだけの関係ではなく、一人の人間として向き合い、共に成長していくパートナーとして関わっていく。そうした文化を組織全体で育んでいくことが、新人が安心して長く働き続けられる職場づくりのポイントとなるでしょう。
とはいえ実際には、
「やってみたけど思うようにいかない」
「離職が止まらず、負のループから抜け出せない」
というケースもあるでしょう。
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