訪問看護の経営は儲かる?黒字化のポイントや収支構造を解説

訪問看護事業は、高齢化の進行により需要が拡大している分野です。しかし、「訪問看護の経営は儲かるのか?」の疑問に対して、簡単に「はい」とは言えません。確かに適切な経営戦略を立てれば安定した収益を得ることは可能ですが、準備不足のまま事業を始めると失敗するリスクもあります。
訪問看護の収益は、医療保険や介護保険の制度を適切に活用できるかどうかがポイントとなります。本記事では、訪問看護の収益モデルや黒字化のポイント、成功するステーションの特徴を詳しく解説します。

目次
訪問看護の概要

訪問看護は、自宅で医療ケアを受けたい方に対して、看護師やリハビリ専門職が訪問し、必要な支援を提供するサービスです。病院や施設ではなく、自宅で生活を続けながら医療を受けたいニーズが増えています。そのため、訪問看護の重要性はますます高まっています。
訪問看護の運営には、医療保険と介護保険の適用条件を理解し、効率的な経営を行うことが大切です。特に、適切なスタッフ配置や訪問件数の確保が、収益を安定させるポイントとなります。訪問看護の仕組みや経営戦略を深く理解することで、持続的に黒字経営を実現することが可能になります。
訪問看護は儲かる?
訪問看護事業は、高齢化社会の進展に伴い、需要が拡大している分野の一つです。しかし、「訪問看護の経営は儲かるのか?」の問いに対しては、一概に「はい」とは言えません。確かに、地域のニーズに合った適切な運営を行えば安定した収益を得ることは可能ですが、安易な経営判断をすると失敗するリスクもあります。
訪問看護の収益モデルは、医療保険と介護保険の制度を理解し、それに基づいた適切なサービス提供ができるかどうかに大きく依存します。訪問回数を増やせば収益が上がるわけではなく、人件費や運営コストを考慮しながら効率的な経営を行うことが大切です。また、利用者様の確保、スタッフの確保・定着、適正な保険請求などの要素を総合的に管理する必要があります。
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訪問看護の収益モデルと仕組み
訪問看護の経営は、訪問回数の増加による利益が向上に加え、加算の活用やスタッフの適正配置など、収益を最大化するための戦略が必要になります。
収益の仕組み
訪問看護の収益は、主に診療報酬や介護報酬です。これらの報酬は、提供するサービスの種類や回数によって変動し、適正な請求が求められます。訪問看護ステーションの売上を決定する要因として、訪問回数・利用者数・加算の有無が挙げられます。
また、効率的なスケジュール管理やスタッフの適正配置が大切です。訪問エリアの選定も収益に大きく影響するため、移動時間を最小限に抑えることが必要です。
医療保険による訪問看護の制度
医療保険を活用した訪問看護は、病気や障害のある方が医師の指示のもと、自宅で適切な医療を受けられるよう支援する制度です。訪問看護ステーションが医療保険を適用するためには、医師からの訪問看護指示書が必要となり、対象者の病状や必要なケア内容によって提供できるサービスが決まります。
医療保険による訪問看護の報酬制度は、基本報酬+各種加算の組み合わせで構成されています。基本報酬は訪問回数や時間によって決まり、加算には長時間訪問看護加算、緊急訪問看護加算、複数名訪問看護加算などがあります。
ただし、医療保険を適用する訪問看護には、一定の制約があり、介護保険との併用が必要なケースもあるため、制度の詳細を理解し、最適な運営を行うことが大切です。
介護による訪問看護の制度
介護保険による訪問看護は、要支援・要介護認定を受けた方が、自宅で適切なケアを受けられるよう支援する制度です。介護保険適用の訪問看護は、主に日常生活の支援や医療的ケアが必要な利用者様を対象としており、医療保険とは異なるルールが適用されます。
訪問看護の介護報酬は、基本報酬+加算の形で算定されます。基本報酬は訪問時間ごとに設定され、加算には長時間訪問看護加算、退院時共同指導加算、ターミナルケア加算などが含まれます。たとえば、認知症の方や褥瘡(じょくそう)管理が必要な利用者様には、適用可能な加算があり、適応となる方には加算を算定することが可能です。
訪問看護経営でよくある失敗理由

訪問看護事業は、適切な経営戦略を立てなければ、収益を上げるどころか赤字に陥るリスクもあります。訪問看護事業を成功させるためには、失敗の要因を事前に把握し、適切な対策が不可欠です。
深刻な人手不足
訪問看護の現場では、看護師やリハビリスタッフの確保が大きな課題となっています。訪問看護は、病院勤務と比べて個別対応が多く、移動を伴うため、負担が大きいと感じるスタッフも少なくありません。そのため、十分な人材が確保できず、経営が立ち行かなくなるケースが増えています。
特に、スタッフの定着率が低いと、採用コストがかさみ、利益を圧迫します。また、利用者様様が増えても人員不足のため対応できず、結果として収益機会を逃してしまうこともあるでしょう。
利用者数の減少
訪問看護ステーションは、地域の需要に応じて利用者様を確保することが不可欠ですが、マーケティング戦略が不十分だと利用者が増えず、経営が難しくなります。特に、競争が激しいエリアでは、他の事業所と差別化できなければ、新規利用者の獲得が困難になります。
この課題を解決するためには、地域の医療機関や介護施設との連携を強化し、信頼関係を築くことが不可欠です。また、利用者様やその家族に対して、訪問看護のメリットを分かりやすく伝える情報提供も大切になります。
資金繰りの問題
訪問看護の経営では、収益が安定するまでの運転資金をどのように確保するかが大切なポイントです。特に、開業初期は利用者様数が少なく、売上が伸びにくいため、資金繰りに苦しむ事業者が多く見られます。
資金繰りの問題を防ぐには、初期投資のコストを抑え、売上が安定するまでの運転資金を確保することが大切なポイントです。また、国や自治体の助成金・補助金を活用することで、資金の負担を軽減することも可能です。加えて、収益の管理を徹底し、無駄なコストを削減する工夫も求められます。
制度基準や法令の違反
訪問看護ステーションの運営には、介護保険法や医療保険制度に関する厳格な基準が設けられており、これを遵守しなければ行政処分の対象となります。特に、適切な保険請求ができていない、看護記録の管理が不十分、配置基準を満たしていないなどの問題が発生すると、事業継続が困難になります。
このようなリスクを回避するには、制度や法令を正しく理解し、コンプライアンスを徹底することが必須です。具体的には、スタッフ全員が法令に関する知識を持つこと、定期的な内部監査を行うこと、外部の専門家と連携することが効果的な対策となります。
訪問看護経営で黒字化するポイント
成功している訪問看護ステーションは、利用者様のニーズを的確に把握し、満足度の高いサービスを提供することで、信頼を獲得しています。また、スタッフが働きやすい環境を整えることで、定着率を向上させ、安定した経営を実現しています。
質の高いサービスの提供
訪問看護の黒字化には、利用者様の満足度を高め、長期的な利用につなげることが不可欠です。そのためには、単に訪問回数を増やすのではなく、サービスの質を向上させ、利用者様の信頼を得ることが大切になります。
利用者様やご家族への質の高い看護・リハビリテーションの提供はもちろんのこと、一緒に対象者を支えていくヘルパー・ケアマネ・ドクターなどの関係者への丁寧かつ密な連絡を行うことで、チームとしてサービスの質を高められる訪問看護ステーションとしての役割を担うことが重要です。訪問看護は、独自に看護を行うだけでなく、このような関係者との連携も含め、評価されています。
働きやすくやりがいのある職場環境
訪問看護の経営は、人材の確保と定着率の向上が大きな課題です。スタッフが安心して働ける環境を整えなければ、離職率が高まり、事業の継続が困難になります。ワークライフバランスを考慮し、オンコール対応の負担を軽減する仕組みを整えることは大切です。
例えば、規模を大きくしていくことで一人当たりのオンコール回数を減らす、判断に迷った際に相談ができるよう2番待機の人員を設けるなどの施策が考えられます。また最近では外部のコールセンターサービスを行っている企業もあります。必要に応じてそのようなサービスを活用することで、スタッフの負担を分散させることができます。働きがいのある職場を作ることで、離職率を低下させ、安定した経営を実現することができます。
地域関係者との関係構築としての営業
訪問看護の利用者様は、ケアマネージャーや病院、地域の介護施設からの紹介が大半を占めます。そのため、地域の関係者との良好な関係を築くことが、利用者様の確保につながります。まず、ケアマネージャーとの連携を強化し、定期的な情報共有を行うことが大切です。
訪問看護ステーションのサービス内容や強みを伝え、信頼関係を構築することで、利用者様の紹介を受けやすくなります。また、地域の医療機関やリハビリ施設と協力し、利用者様の退院後のケアプランを共同で作成することも効果的です。これにより、病院からの紹介が増え、安定した利用者様確保が可能となります。
ブランディング
訪問看護ステーションの経営は、他の事業所との差別化を図り、強みを明確にすることは、黒字化のための大切な戦略です。利用者様や地域の関係者に、自社のサービスの魅力を伝え、信頼を得るためのブランディングを行う必要があります。
まず、ホームページやSNSを活用し、訪問看護の情報を発信することが効果的です。サービス内容やスタッフの紹介、利用者様の声などを掲載し、訪問看護の価値を伝えることで、新規利用者様の獲得につなげることができます。
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訪問看護の将来性

今後、病院や施設ではなく、自宅で生活しながら医療を受ける方が増えると予測されており、訪問看護の需要は高まり続けるでしょう。また、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔診療やリモートモニタリングの発展により、訪問看護のサービス内容も変化し、より柔軟で効率的なケアが可能になります。
超高齢社会におけるニーズ
日本はすでに世界でも有数の超高齢社会となっており、2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達することで、さらなる在宅医療の需要増加が見込まれます。医療費の増加や病床数の不足の問題に対応するため、国も在宅医療や地域包括ケアシステムの強化を推進しています。
訪問看護は、高齢者が住み慣れた自宅で医療サービスを受けられる持続可能な医療提供体制としての役割です。特に、認知症や慢性疾患を抱える高齢者、終末期ケアが必要な利用者様への対応が求められており、今後の訪問看護ステーションの役割は欠かせません。
デジタル技術の進化に伴う在宅医療ニーズ
テクノロジーの発展により、訪問看護の形態は大きく変化しています。特に、遠隔診療やAIによるデータ管理、リモートモニタリングの活用が進み、より正確で迅速な医療提供が可能です。
例えば、AIによるスケジュール作成を行うサービスによって、管理者がスケジュールやシフト作成にかかる時間を大幅に作成するようなツールも出てきています。このシステムによって、スタッフの教育などより本質的な業務に時間を使うことができるようになります。
また、電子カルテのクラウド化により、医療・介護従事者間の情報共有が容易になり、チーム医療の質が向上し、これによって、利用者様はより統合的なケアを受けられるようになりました。
まとめ
訪問看護の経営は、高齢化社会の進展に伴い大きな可能性を持つ一方で、適切な戦略がなければ赤字に陥るリスクもあります。収益を安定させるためには、医療保険や介護保険の制度を正しく理解し、効率的な人員配置や訪問件数の最適化が不可欠です。
訪問看護事業を成功させるためには、制度の理解と市場分析、適切な経営戦略の立案が求められます。UPDATEでも訪問看護ステーションの立ち上げ支援をしております。訪問看護の経営をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせページよりご相談ください。

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