特別訪問看護指示書とは?発行条件など特別訪問看護指示書の基礎知識・注意点を徹底解説
はじめて訪問看護に携わる際、特別訪問看護指示書について詳しく理解できていないという方は多いのではないでしょうか?「通常の訪問看護指示書との違いは?」「発行条件は?」などの疑問を抱いている方もいることでしょう。
この記事では、特別訪問看護指示書の基礎知識から注意事項まで、初心者向けに詳しく解説します。訪問看護管理者としての第一歩を踏み出そうとしている方、訪問看護師として日々奮闘している方の一助となれば幸いです。
新任管理者の方は、『訪問看護ステーションの管理者に求められる5つのスキルとは?役割やメリットを解説』も参考にしてみてください。
特別訪問看護指示書とは?
特別訪問看護指示書(特別指示書・特指示)は、通常よりも頻回な訪問看護が必要な利用者に対し、主治医の判断によって発行される指示書です。通常の訪問看護指示書とは異なる条件で発行されます。
特別訪問看護指示の発行により、在宅移行時の細やかな支援や、症状悪化時の迅速なサービス提供が可能です。
在宅移行時の細やかな支援
在宅移行時は療養環境の変化に順応するため、利用者やその家族にとって不安やストレスを感じやすい時期です。また入院中に受けていた医療処置を引き続き必要とする場合があります。
特別訪問看護指示のもと、頻回な訪問看護をすることで、在宅移行期の利用者や家族への細やかなサポートができます。家族だけでは対応が難しい医療処置や専門的なケアを訪問看護師が担うことで、利用者や家族の安心感が高まり、家族の精神的な負担も軽減するでしょう。
症状悪化時の迅速なサービス提供
慢性疾患やターミナル期など、症状が急速に悪化しやすい状態にある利用者にとって、迅速なサービス提供が受けられることは安心につながります。特別訪問看護指示のもと、訪問看護師が頻回に訪問できれば、利用者の状態変化を早期に発見し適切に対処できるでしょう。
受診が必要な場合には、速やかに主治医や医療機関と連携することも可能です。
通常の訪問看護指示書との違い
特別訪問看護指示書は、通常の訪問看護指示書とは異なります。ここでは、違いについて詳しくみていきましょう。
必ず医療保険が適応となる
特別訪問看護指示書が発行された場合、必ず医療保険が適応となります。介護保険対象の利用者の場合でも、特別訪問看護指示期間は医療保険による訪問看護に切り替わる点に注意が必要です。その場合、症状の改善に伴い特別指示期間が終了または修正されれば、介護保険による訪問看護に再度切り替わります。
訪問可能な回数・時間が異なる
通常の訪問看護指示書の場合、医療保険では1日1回・週3回までの訪問が原則となっています。介護保険では訪問回数に制限はありませんが、要介護度に応じて支給限度額に上限があるため、その範囲内で訪問する必要があります。時間については、1回の訪問につき30分以上90分未満と定められています。
一方で、特別訪問看護指示書の場合、1日に2回以上・週4日以上の訪問が可能です。週1回までに限り、90分を超える訪問が可能です。90分を超える訪問をした場合、長時間訪問看護加算が適用されます。
複数の訪問看護ステーションからの訪問が可能
通常の訪問看護指示書で、一定の条件を満たした場合を除き、通常できる訪問看護ステーションは1か所に制限されます。一方で、特別訪問看護指示書が発行されると、2ヶ所以上の訪問看護ステーションから訪問可能です。
ただし、複数の訪問看護ステーションから訪問する場合には、以下の2点に注意が必要です。
- 訪問看護ステーションそれぞれに訪問看護指示書・特別訪問看護指示書が必要
- 同一日の複数の訪問看護ステーションからの訪問は不可
複数名の看護師による訪問が可能
特別訪問看護指示書の対象となる場合に行うケアや医療処置は、ターミナルケア・中心静脈栄養・点滴注射・真皮を超える褥瘡などが挙げられます。処置量が多くなることも考えられるため、複数名の看護師で訪問し、十分なケアを提供できるような体制を整えましょう。
指示期間が異なる
通常の訪問看護指示書の指示期間は最長6ヶ月ですが、特別訪問看護指示書の指示期間は最長14日です。特別訪問看護指示書は利用者の状態悪化時や退院直後など、一時的に発行される書類であり、指示期間が短く設定されています。
特別訪問看護指示書の発行条件について
続いて、特別訪問看護指示書の発行条件について確認しましょう。
特別訪問看護指示書を発行できる3つの条件
特別訪問看護指示書は、以下のような状況下にある利用者に対し発行されます。
- 急性感染症等の急性増悪期
- 末期の悪性腫瘍等以外の終末期
- 退院直後で週4日以上の頻回の訪問看護を必要としている
疾患や症状の制限はないものの、定められた発行条件を満たす場合に発行できます。
月2回発行できる2つの条件
特別訪問看護指示書の発行は、利用者1人につき月1回までが原則です。しかし、以下に当てはまる利用者は月に2回まで発行可能です。
- 気管カニューレを使用している状態
- 真皮を超える褥瘡の状態
参考:熊本県看護協会 訪問看護総合支援センター Q&A
一般社団法人全国訪問看護事業協会 社会保障審議会 介護給付費分科会【第226回】資料
特別訪問看護指示書の様式
特別訪問看護指示書に記載する項目は以下です。
- 指示期間
- 点滴指示期間
- 利用者の基本情報
- 病状・主訴
- 一時的に訪問看護が頻回に必要な理由
精神科の場合、精神科特別訪問看護指示書に記載する必要があります。特別訪問看護指示書はこちらからダウンロードできるようにしています。書式が必要な方はご活用ください。
帳票データ:精神科特別訪問看護指示書・特別訪問看護指示書PDF
特別訪問看護指示書における4つの注意点
特別訪問看護指示書を受け取る際に、気を付けるべき点について確認しておきましょう。記載された内容に誤りがある場合、診療報酬の算定が取れなくなってしまうことがあるため、以下の4つのポイントに注意が必要です。
- 訪問看護指示書と同じ医師による発行か?
- 指示期間に誤りがないか?
- 頻回な訪問看護が必要な理由が記載されているか?
- 点滴注射指示の具体的内容・期間が記載されているか?
続いて、それぞれについて詳しく解説します。
訪問看護指示書と同じ医師による発行が必要
特別訪問看護指示書を発行する際は、通常の訪問看護指示書が発行されていることが前提となります。これら2つの指示書は、同一の医師が発行する必要があります。
指示期間に誤りがないか?
特別訪問看護指示書の指示期間は最大14日間と定められています。14日を超えた期間が記載されていないか確認しましょう。14日以上の頻回な訪問看護が必要な場合には、改めて主治医の指示が必要です。
月1回14日までという原則に従っていれば、月をまたいで14日以上連続した指示期間になることは問題ありません。また前述したように、気管カニューレを使用している状態・真皮を超える褥瘡の状態にある利用者は月2回まで発行できます。
特別訪問看護指示書が連続して発行される場合、その旨を訪問看護療養費明細書に記載する必要があります。
頻回な訪問看護が必要な理由が記載されているか?
一時的に訪問看護が頻回に必要な理由の項目がしっかりと記載されているか確認しましょう。特別訪問看護指示書の発行に必要な条件である、急性感染症等の急性増悪期・末期の悪性腫瘍等以外の終末期・退院直後で週4日以上の頻回の訪問看護が必要であることを明記する必要があります。
例)心不全の患者が体重増加・浮腫・息切れを認めている。一時的に訪問看護が頻回に必要である。
点滴注射指示がある場合に具体的内容・期間が記載されているか?
点滴注射指示がある場合、具体的な内容・期間が記載されているか確認が必要です。点滴注射の指示期間は最大7日間と定められているため、期間の誤りがないかもチェックしましょう。
まとめ
この記事では、特別訪問看護指示書の発行条件について解説してきました。通常の訪問看護指示書との違いや注意点について理解を深め、現場での有効活用につながれば幸いです。訪問看護に携わる皆さまが、より良い訪問看護サービスを提供できるよう祈っています。
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